大雪山系の「複合」遭難 参加者・ガイド・ツアー会社の…

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   <テレビウォッチ> 北海道・大雪山系のトムラウシ山は、中高年登山者に人気の百名山の1つだという。7月16日、ここで8人の命が奪われた。ガイド3人に引率された15人の中高年ツアーの登山中、ガイド1人、参加者7人が低体温症のため、遭難死したのである。

   森本健成キャスター(国谷裕子キャスターは休み)から、事故分析を問われた青山千彰(関西大学情報学部教授=スタジオゲスト)は、「原因は調査中ということなので推定の範囲で」と断ったうえで、単なる気象遭難ではなく、(1)ツアー客、(2)ガイド、(3)ツアー会社、それぞれの持っている問題が複合した遭難だ、と言った。

会社の要求とガイドの負担

   (1)については、高齢の参加者が多く、コースに見合った体力があったか、装備は十分であったか、を挙げる。生還した60代の参加者たちも、簡単な装備で安易に登りすぎたかもしれない、と口をそろえる。

   青山が特に重視するのが(2)で、ガイドの判断がポイントだった、と指摘する。そして「出発の段階で、気象だけでなく、参加者の疲労度(ツアー3日目の事故だった)、健康状態を把握できていたか。途中、引き返すという判断もあってよかったのではないか」と語る。

   激しい雨が降っていた朝5時半、ガイドたちは出発すべきかどうか検討したようだ。が、昼過ぎから天気が回復すると予測して山小屋を出る。難所のロックガーデンを越えた際には相当、体力を消耗したらしい。雨は激しく降り続く。風も強まる。番組によると、当日、トムラウシ山周辺は、最低気温4度、台風並みの最大風速25メートルを記録したという。

   ついに1人が脱落して、ガイド1人が付き添う。やがて4人が進めなくなり、やはり1人のガイドが残る。先行した10人とガイドも激しい雨と強風に行く手を阻まれ1時間ほど待機する。が、この待機策が裏目に出た。

   「女性で奇声を発する人がいた。低体温症の表れだろう」「周りの人が顔をパチパチやり出した。眠気が出た疲労の症状で遭難だなと思った」と、いずれも男性の生還者が証言する。

   危険を感じた人は我れ先に下山を始め、隊列はバラバラになり、大惨事は起こった。

   といってガイドばかりに大きな責めを負わせるのも気の毒のようだ。ツアー会社はガイドに、客の満足度を高めること、安全を確保することの2つの役割を担わせているという。

   宮下岳夫(北海道山岳ガイド協会理事長)は、これがガイドの負担になっているとし、「現場を任されるガイドは、売上げ第1で考えるとなるべく(会社の)計画どおりにやりたい。自分としてはやりたくないと思っても頑張ってしまう」と話す。

   青山が、『複合遭難』としたのは、そういう意味だったのである。

   ツアー会社は当初「緊急時の日程を変更する権限はガイドに与えており、会社に責任はない」としていたが、NHKの取材に対し「判断は現場のガイドが行うが、その結果起きた事故の責任は会社にある」と認めた、とナレーションが誇らしげに伝えた。

   『転ばぬ先の杖』『撤退する勇気』『現場のことは現場に』――いくつかの箴言を想起させる大事故だったような気がする。

アレマ

   *NHKクローズアップ現代(2009年7月23日放送)

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