退社時にカバン中身チェック 内部統制ってそういうこと?

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   <テレビウォッチ>「内部統制」とは、なんともトゲのあるいい方だが、ひとつ間違えば企業の存立にかかわる不正やミスを、事前に防ぐためのルールづくりのことである。しかし、あまりにきびしくすると、会社自体がおかしくなる。そのかねあいに悩む現場にカメラがはいった。

   先頃都内で開かれた「内部統制」担当者を集めたセミナーの参加者は、昨2008年の3倍になって、この問題に悩む企業の姿を浮き彫りにした。情報漏洩や粉飾決算、商品欠陥の隠蔽、食品偽装、インサイダー取引などの重大な不正から、日常の単純ミスにいたるまで、心配のタネは多い。

現場からのアイデアで

   ある企業の「内部統制」ぶりに、社員から経営コンサルタントに悩みが寄せられた。いわく(1)出退社でカバンの中身をチェックされる(2)取引先からの贈り物を返すことにしたため、関係が悪化し会社の不利益になっている(3)電子メールを送るにも上司の許可が要る、などなど。

   コンサルタントは、「力を入れ過ぎると、社員のやる気をなくす。あれもダメこれもダメでは、いわれたことだけになって、自発的に何かをやろうとしなくなってしまう」という。

   長野のJA佐久浅間で「内部統制」担当者は、現場から激しい反発を食った。出荷個数の間違いが多いために、農家の申告をチェックするよういったところ、「農家を疑ったら、信頼関係が損なわれて農協離れが起こる」というのだった。ほかに職員の運転マナーの問題でも、似たような反応で、担当者は「評価もされず、喜ばれない」と悩む。

   この問題に詳しい葉玉匡美弁護士は、「現場から意識をもってアイデアを上げてくるようにしないといけない」という。「今の内部統制はアメリカの監査の考え方の導入で、上から押し付けている。結果、無駄な文書(決済)が増えたりして、風通しが悪くなっている」

   ある大手OA機器メーカーが、あらゆる不正、ミスのリスクを洗いだしたところ3万件あった。内部統制の経費が年に1億円、100人以上が必要になった。

   解決の糸口は意外なところにあった。33ある部署のリスクを比較したところ似ていることがわかった。たとえば伝票類も別々だったが、これを同じにしてみたところ、33のリスクが一気にゼロになった。「これが不要になりました」と両手を広げたほどの書類を担当者が示した。むろん、多数の人員も浮いた。

ミスは必ず起こる

   京都の通販会社では、現場が自ら管理していた。月に1回、顧客からのクレームをもとにリスクの検討会議が開かれる。2年前、通販のカタログのミスが多発したとき、救ったのは入社間もない3人の社員の指摘だったという。

   いま担当者は、「上からの押しつけでなく、個人の意識が変わるとそれが企業風土になる。気がついたら不正など起こらない」という。これはもう、統制ではない。

   国谷裕子は、「企業のトップ、あるいは企業ぐるみの不正が隠蔽されないような仕組みは可能か?」と聞いた。これは最後まで残る問題だろう。

   葉玉弁護士は、「隠蔽しにくくはできる」という。「社内のルートの他に弁護士などにつながるチェックルートを作ることだ。とはいえ、ミスは必ず起こる。起こったときどうするかが重要だ」と。

   国谷は最後に「安心して働ける企業になるかどうか」といった。企業は社員で成り立つ。その社員を信頼するのが経営者。力量はそこで問われる。結論は意外に平凡なのかもしれない。

ヤンヤン

*NHKクローズアップ現代(2009年8月3日放送)
文   ヤンヤン
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