仏像ブームで盗難流行 「心のカギ」はどこへ行った

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   <テレビウォッチ>番組がはじまると、いきなり仏像のミニチュアを手にしたみうらじゅんのアップ映像。仏像の魅力をいちはやく世に訴えてきた功績が認められて、トップを飾ったのだった。

   ようやく世の中が彼に追いつき、阿修羅像展には100万人が押しかけ、仏像は海外でも高値で取引されるほどの高評価になった。そこで、なぜいまにわかに仏像が人気なのか、ブームの背景を探る――流れに見えて、さにあらず。ブームの影で急増する「仏像盗難」が今回の眼目だった。「仏様に手を出す罰当たりな行為」(国谷裕子キャスター)がこのごろ全国的に横行中。判明してるだけで、3年間で250体近くの仏像が消えたという。

ブロ窃盗団がスイッチ

   番組が取材に出かけたのは、奈良県の山間、黒滝村にある黒滝権現堂。仏像がいつの間にか忽然と姿を消したのだった。「こんな所まで盗みに来るとは夢にも思わなかった」と関係者も驚く。お堂は普段無人で、カギはかけていたが、簡単に外から開けられるようになっていた。

   美術品保険鑑定会社の社長によれば、「入りやすい、取りやすい、逃げやすい」として、地方の仏像がとくに狙われる傾向にあるという。「昔は貴金属を盗んでいたプロの窃盗団が仏像にスイッチしてきた」と見ている。

   スタジオゲストには森本公誠・東大寺長老。法衣をまとった異色のゲストは、「仏像は単なる像ではなく、必ず魂が入ってる。その部分がいつの間にか忘れられてる」ことが、安易な仏像盗難を生む一因と考えているようだ。

   カネになる、取りやすいというので取ってしまう。現代的な見方では、カギをかけないから、そこにつけ込まれて盗まれたんだ(盗まれたほうも悪い)と言う人もいるが、「そういう言い方は酷」だと森本長老。カギがかかってないのは、むしろ盗もうとした人間の心のほうである。欲望のままに行動し、抑制力が働いてない。

   それぞれの人間が自分の欲望にカギをかけなければいけない。昔の人はそう知ってたし、親や地域社会からカギをかけることを教えてもらうシステムがあったが、いまはそうしたことが非常に希薄になっている。

   仏像盗難を通して見えてきたのは、古き良き道徳心を失い、変質してしまった日本人の心だった――的な着地の仕方は、ありがたい講話を聞いてるようであった。

ボンド柳生

* NHKクローズアップ現代(2009年8月4日放送)
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