「憎め、攻撃しろ」の時代 マンガ家たちの「反戦」

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   <テレビウォッチ>原爆が広島に投下されてから64年目の今日(8月6日)、番組が取り上げたのは「マンガ家たちの『戦争』」。

   現在、「私の八月十五日展」という催しが全国を巡回中だ。マンガ家111人が描いた絵と文を中心に、それぞれの『戦争体験』を集めた展覧会である。そこには「マンガ家の原風景、心の衝撃や心の傷あと」(国谷裕子キャスター)が刻まれている。

   番組は、参加したマンガ家の作品を見せるとともに、こめられた思いを聞きだして行く。

「今」への危機感

   空腹で困っている人を見ると自分の顔をちぎって分け与える異色のヒーロー『アンパンマン』の作者、やなせたかし(90)は24才で徴兵されて中国に送られ、日中戦争末期、飢えに苦しむ兵隊の姿を目のあたりにする。「『正義の戦い』と信じていた。が、飢えている人間さえ救えない正義の戦いなんて存在しない。戦争そのものが悪」と怒り、「正義ならば最初に人の飢えを救うべきだということを痛感して、それがアンパンマンになる」と綴る。

   さいとうたかお(72)の『ゴルゴ13』には、テロ、紛争と、さまざまな戦争が描かれる。さいとうは「戦争がなくならない限り、ゴルゴの無益な戦いは終わらない」とし、「人間のやることで、戦争ほどバカらしいものはない。命がいかにはかなく、いかに大事か、その向こうがどういうことなのか、考えてほしい」と述べる。

   マンガ家たちが展覧会に熱心な背景には、今の時代への強い危機感がある、と番組は伝える。

   『あしたのジョー』の、ちばてつや(70)は「最近、若い世代の戦争に対する抵抗感が薄れている」と危惧し、「あちこちで戦争が起きている、とニュースで聞くと、日本が引き込まれそうで、そういう時代が怖い。それをマンガにして伝えられればと思う。間に合うかどうか心配だけど」と苦笑する。

   スタジオゲストの山田洋次(映画監督)は13才のとき大連で終戦を迎えたという。その戦時体験を「私の八月十五日展」に寄せている。展覧会について山田は「絵には悲惨な事実が描かれているけど、表情などが人間的でユーモラスだ。それがすべてに共通している。ユーモアがなければマンガが成り立たないし、ユーモアはやさしい思いがないと持てない。戦争中はやさしい気持ちが禁じられていた」とし、今の時代の空気を「やさしい気持ちが削られて行くというか、憎め、攻撃しろ、ということの方が叫ばれ出している」と危ぶむ。そして、自作の「母べい」を例に「少年時代に知っていることを、臨場感をもって伝えられるという思いがあって作った。そういうことをやって行かねばいけない」と語る。

   展覧会を中国で開催する動きがあり、『はだしのゲン』の英語版をオバマ大統領に贈る計画も進められているらしい。「日本が誇るポップ・カルチャー」(国谷)のマンガは、マンガ好きの首相を代表とする政治家たちになり代わって『反戦・核廃絶』の先頭に立つのだろうか。

   マンガ家の文章の朗読を松平定知が担当している。さすがにうまい。

アレマ

* NHKクローズアップ現代(2009年8月6日放送)
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