展示物動き出す筋はともかく 散りばめられた小ネタがいい(ナイトミュージアム2)
(C)2009 Twentieth Century Fox
<ナイトミュージアム2>真夜中に博物館の展示物が動き出すという、ユニークな題材で観客の心をがっちりと掴んだ前作『ナイトミュージアム』。今回の続編では、ニューヨーク自然史博物館からワシントンのスミソニアン博物館へと舞台を移し、再び展示物たちとの騒動を繰り広げる。
世界一の規模を誇るスミソニアンの複合型博物館が舞台になったことで、前作に比べてかなりスケールが大きくなった。当然ながら展示物の数も増え、前作からお馴染みのキャラに加えて、新たに登場する展示物のキャラクターたちはとてもバラエティ豊か。それらが思い思いに動き回るのを見ているのは、とにかく楽しくておもしろい。今回は人形や動物だけでなく、なんと彫刻、絵画、飛行機、ロケットまでもが動き出すのだ。ナポレオンやアル・カポネといった歴史に名を残す有名人のほか、かの有名な彫刻『考える人』や、巨大な石像のリンカーン大統領も。さらにはライト兄弟の飛行機に、アポロ11号の司令船、首振り人形のアインシュタインや、ダイオウイカなど。さまざまな展示物が登場し、賑やかな博物館はさながらワンダーランドと化す。
ただキャラが増えたところで、この映画に新鮮さは無い。でもそれは仕方のないことだ。『展示物が動き出す』という物語の基盤は前作と変わらないのだから。とはいえ明白な悪物が出てきたり、主人公のラリーとアメリア・イアハート(女性で初の大西洋単独横断飛行を遂げた人物)とのささやかなロマンスが生まれたりと、やや起伏を持たせた話になった。
しかし物語そのものより、実は随所に散りばめられた小ネタの方がおもしろかったりするのだ (むしろこの映画、見ているうちに内容はどうでもよくなる) 。身長にコンプレックスを持つナポレオン。ナンパする『考える人』。ちょっかい出すのが好きな彫刻の天使トリオ。ほかにもラリーとアメリアが絵画の中に逃げ込んだり、絵が持っていた武器を頂戴したりと、おもしろいアイデアが満載。映画を楽しんで貰おうとするスタッフの遊び心が伝わってくる。古代エジプト王が銀河の悪の帝王を冷やかすシーンには思わず笑ってしまった。
主演のベン・スティラーは「もしパート3があるなら、ぜひルーヴル美術館を舞台にやりたいね」と妙に現実的な(?)冗談を言っていたが、世界中に博物館がある限り、この映画はシリーズ化していくのだろうか……。展示物たちの賑やかさに負けないストーリーが出来たら見てみたい気もするが、もうこれ以上はお腹いっぱい。それはともかく、本作は誰が見ても楽しめる『安全圏内』の作品なので御安心を。
巴麻衣
オススメ度:☆☆☆