民主政権誕生で大はしゃぎ 「1番」はこの週刊誌

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   日曜日の午前、母校の小学校の投票所に行った。いつもは某革新政党へ1票投じているのだが、今回は、民主党に入れた。もちろん選挙区の民主党候補が人格識見、ともに優れているからだが、民主党への不安もあったからだ。

   選挙が始まる前から、マスコミが挙って民主党の大勝を書き立て、投票日直前の朝日新聞は320議席を超える勢いだと書いた。それによって激励票や同情票が自民党に集まる「アンダードッグ効果(負け犬効果)」があるかもしれない。事実、選挙戦最終日夜、池袋へ麻生太郎自民党総裁の演説を聴きに行ったが、同時刻に、反対側でやっていた鳩山由紀夫民主党代表よりも、多くの人が集まったと、日曜日の朝刊に書いてあった。

   テレビでは、午前中の投票率は前回を上回ったとしていたが、夕方のニュースでは、前回を下回るかもしれないと報じていた。

各誌発売日を変更

   しかしすべてが杞憂に終わった。NHKの開票速報は、スタートとほぼ同時に「民主党300議席超え」と流し、それからは、民主党候補者の当確があふれ続けた。

   今週は、多くの週刊誌が発売日をずらして選挙結果を詳しく載せている。ポストは火曜日発売だったが、頭の4ページをあけておいて、日曜日の23時30分時点で判明した注目候補たちの当落ドキュメントを掲載していた。夜中に印刷・製本して、全国の書店やキオスク、コンビニへ配送したのだろう。ポストと現代は、大きなイベントがあるときに限ってだが、発売日をずらして速報を入れるようにするのだろう。

   現代は2日ずらし、文春、新潮は1日前倒しして、水曜日に発売した。

   選挙報道では「他人の不幸は蜜の味」である。落選した候補のほうにドラマがあるから、取りあげる人間もほとんど同じになる。小選挙区で落ちた小池百合子、武部勤、片山さつき、与謝野馨、中川秀直、山崎拓など、入っているエピソードも似たり寄ったりである。

   見所は、民主党への温度差が表紙や特集に滲み出ているところだ。一貫して民主党応援団を任じていた朝日と現代が、「民主党革命 日本が変わる」(朝日)「ついに民主党政権誕生 日本が変わる 歴史が変わる!」(現代)。毎日までも「ニッポンが変わる! 民主革命」と、民主党大勝御礼特大号のようだ。

   中でも現代のはしゃぎぶりがすごい。巻頭のカラー・グラビアで、鳩山、小沢、菅、岡田の4人を紹介し、モノクロ・グラビアでも、勝利から一夜明けて、自宅を出る鳩山代表の姿を入れている。特集「なめたらあかん!必読! 新総理鳩山由紀夫という男」でも、鳩山という人物は、そう一筋縄でいく男ではないと、よいしょの大盤振る舞い。

   読んでみると、彼をリードしているのは幸夫人だという話だから、目新しいものではないが、何があっても、現代は民主党を支えますよという「熱気」は伝わってくる。

   一歩引いて、冷静なのが文春と新潮。文春はワイド特集「政権粉砕!『勝者の混迷』と『敗者の怒声』」。立花隆氏の「緊急寄稿 自民党の『破滅』」を掲載。立花氏は、「GDPの170%超という世界の財政史上類例がないほどの規模に達してしまったこの長期債務をいったいどうするつもりなのか。(中略)今回の選挙で、両陣営のどちらからも真剣な議論が聞こえてこなかった。(中略)要するに、自民党にも民主党にも責任能力が基本的に欠如しているのだ」とバッサリ斬っている。

小沢政治の正体とは

   新潮は、この選挙結果を「われら衆愚の選択」と斜め斬りだが、内容は他誌と大差ない。

   さて、宴は終わって、数の上では、かつてない大政党が誕生した。こんなに勝たせてしまって大丈夫なのかという不安はあるが、それをひとまず置いておいて、週刊誌が指摘する問題点は3つに集約されるようだ。

   1つは、鳩山由紀夫氏のリーダーとしての資質。2つは、田中角栄が作り上げた大派閥を超える「小沢派」を率いる小沢一郎氏が、次に何を考え、どう動くのか。3つ目は、霞ヶ関支配を打破するといっているが、本当にできるのか。

   1に関しては、現代を除いてはどこも、まずはお手並み拝見といったところか。小沢氏については、どれを読んでも、確たるものがない。

   「小沢の狙いは明確である。場合によっては、鳩山内閣をつぶしてもいい。(中略)是が非でも予算を3回通して、4年間政権を維持し続ける。その間、官僚と自民党とマスコミが作った政治システムを壊せば、『日本改造』が達成できると信じているのだ」(上杉隆「小沢一郎の17年戦争」朝日)

   「『小沢政治』に大義などない。今でこそ対米自立を説くが、自民党幹事長時代に米国の言いなりになって、430兆円もの公共事業を約束したのは小沢氏だった。今でこそ小泉構造改革を批判しているが、かつての著書『日本改造計画』は小泉張りの思い切った規制緩和を主張していた。(中略)とても体系立った理念や日本の将来像を持っているとは考えられない」(清水英輔「小沢一郎支配の始まりと終わり」現代)

   「小沢氏は本来、国民には『自己責任』、国家には『普通の国』論を唱えてきた新自由主義者だ。(中略)そうした小沢流の国家改造計画に強権的な政治手法が加わると政治的大混乱を招きかねない」(「『小沢闇将軍』が日本を支配する」ポスト)

   小沢氏の考える「日本改造計画」の全貌は、最近、本人がまったく語らないため、茫洋としてつかみ所がないのだ。

   霞ヶ関の官僚支配からの脱却も、そう簡単なことではない。官僚の反乱で、鳩山政権を立ち往生させないためには、長谷川幸洋・東京新聞論説委員が現代で書いているように、メディアが官僚の流す情報に引っ張られず、政治の一プレーヤーとしての自覚を持たなくてはならない。

   どちらにしても、ここまで民主党を勝たせてしまった責任は、最長4年間、国民が負わなければならない。週刊誌には、これまで以上にしっかりと権力・民主党を監視し、報道してもらいたいものだ。

新雑誌「G2」への期待

   追記 講談社から9月4日に、「月刊現代」の後継誌「G2」(藤田康雄編集長・387ページ・定価1400円=Gは現代のG)が発売になる。矢野絢也「池田大作と私」、柳美里「私の児童虐待」、沢木耕太郎「耳を澄ます」などの力作が載っている。だが、講談社MOOKとあって、次の発売がいつかは書いてない。季刊という話を聞いているが、創刊号の売れ行き次第では、どうなるか。

   ここに載ったものは、近々、ネットでもすべて読めるようにするというが、こうした試みが功を奏するのか。ともかく藤田編集長に望みたいのは、厳冬期にあるノンフィクションの先行きを少しでも明るくする雑誌にしてほしいということである。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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