2024年 4月 23日 (火)

海のお宝10兆円! 「見つけた者勝ち」でいいか

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   <テレビウォッチ>一獲千金を夢見るトレジャー・ハンターが沈没船から金・銀、財宝ザックザク……。こんなニュースは滅多にあるものじゃない、と思っていたら最近は様子が違うようだ。

ギャングまがいの「ハンター」も

   日進月歩の海底探査技術を背景に、海底の宝探しは収益力の高いビッグビジネスになっている。あげく機関銃を装備したギャングまがいのトレジャー・ハンターまで出没し、水中文化遺産の争奪戦の様相という。

   畢竟、沿岸の関係国は自国の文化遺産を略奪の魔の手から守ろうと必死。ユネスコも「陸だけでなく海の文化遺産も守ろう」と、『水中文化遺産保護条約」を発効させた。

   番組では、こうしたトレジャー・ハンターの宝探しの現状、沿岸関係国によるハンターとの熾烈な攻防にスポットをあてた。

   大地震で海底に沈んだローマの古代都市。ナポリ近郊の海底に、皇帝の別荘が美術品を含めてそっくりそのまま見つかった。

   中国・広東省の沖合では800年以上も前に沈んだ貿易船が引き揚げられ、総額10兆円を超える文化財が見つかっている。

   スペイン・アンダルシア州の大西洋沖合には1200隻以上の沈没船があるといわれ、水中文化遺産の宝庫として知られている。

   海底探査技術の向上で、考古学的な文化遺産の発掘は今や「陸」から「海」に移った感じだ。

   そこで当然、発見が相次ぐこうした水中文化遺産はどこに帰属し、回収された美術品や財宝は誰のものかという疑問が湧いてくる。最近、次のような訴訟沙汰になったケースがある。

   アメリカ・フロリダ州に本拠を置くトレジャー・ハンター会社『オデッセイ社』が2年前にスペイン沖の海底で、沈没船からスペイン金貨など500億円相当の財宝を発見。財宝をチャーター機でそっくりアメリカへ持ち帰った。

   怒ったスペイン政府は、財宝は領海内で沈んだスペインの船から奪ったもので、「略奪」の罪で訴訟を起こし、係争中という。

「保護条約」日米英批准せず

   ここで、ユネスコが「陸の文化遺産と同様、考古学的価値の高い水中文化遺産も守らなければいけない」(松浦晃一郎ユネスコ事務局長)と保護条約を制定し、今2009年から発効した。

   条約の中身は(1)水中文化遺産の商業的利用の禁止(2)領海だけでなく公海も保護の範囲が及ぶ、というもの。

   ただし、現在までに批准した国はスペイン、ポルトガル、メキシコ、キューバなど26か国にとどまり、日本やアメリカは批准していない。

   畢竟、宝探しに狂奔するトレジャー・ハンターたちと積極的に保護しようとする沿岸関係国の熾烈な攻防戦がいまだに繰り広げられているのが現状だ

   国谷キャスターが「金銀財宝をザクザクと引き上げ、持って行ってしまう現状をどうみます?」に、国際海洋法に詳しい小山佳枝・中京大准教授は次のように答えた。

   「ユネスコの調査によると、この10年間で160回もの盗掘が報告され、なかには値を釣り上げるために文化遺産の一部を破壊した悪質なケースもあります。今まだ、無法が続いていると……」

   笛吹けど踊らず。なぜ条約の批准が進まないのか。その理由について条約制定会議のアメリカ代表は次のように言う。

   「米英、日本など伝統的な海洋大国は、条約によって保護領域がなし崩し的に拡大することに懸念を抱きました。妥協点を模索しましたが、米英としては納得できるものではなかった」

   さらにもう1つ大きな懸念材料があるという。

   小山によると、各国が海洋資源の開発に注目している中で「この水中文化遺産保護条約の枠組が、海洋資源開発の枠組づくりに大きく応用されていく可能性があると見られている」のだ。

   国谷は「水中文化遺産と海洋資源とは大きな開きがあるように思えるのですがね~」と訝るのももっともな話だが、資源開発の枠組が絡むとなると、やはり批准には慎重にならざるをえないのかも……

   この点、番組で日本政府の考え方にも触れてほしかったが、残念ながら聞くことができなかった。

モンブラン

*NHKクローズアップ現代(2009年9月9日放送)

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