2024年 4月 19日 (金)

消える自動車部品メーカー エコカーブームの裏に何が

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   <テレビウォッチ>日本を代表する自動車産業。いま大きな転換期を迎えている。アメリカのリーマンショックがもたらした未曽有の自動車不況。それに並行して普及し始めた低燃費、エコカーの動き。

   奔流となって押し寄せてきたこの高波は、急速な部品の電子化をもたらし、技術の主役の座もソフトウエア技術に変わりつつある。

倒産が3倍

   こうした影響をモロに被っているのがピラミッド構造のすそ野を支えてきた中小部品メーカーや下請けメーカーだ。苦境の真っ只中にあり、なかには自動車依存からの脱却を目指すメーカーも出てきた。

   番組は、それらの部品メーカーが今、どんな活路を見出そうとしているかを追った。

   麻生前政権が鳴り物入りで行った「低燃費車への補助金」は、「高速道路の土・日曜日1000円乗り放題」と相まってハイブリッド車など低燃費車が飛ぶように売れた。

   ところが皮肉にも、今2009年1―9月の自動車関連企業の倒産件数は61社と、昨年同期に比べ3倍以上に膨れ上がった。

   不況に加え、低燃費車の競争激化。従来の機械部品から電子部品に、主役の座が置き換えられ、対応できない部品メーカーが脱落しているのだ。

   最新鋭のハイブリッド車や電気自働車が展示された『東京モーターショー』。見学に訪れた大手部品メーカー『ケーヒン』の小田垣邦道社長は「来るべきものが来たという感じですな~」とつぶやいた。

   同社の主力商品は、かつてはドライバーがアクセルを踏むことによって空気の量を調節し、エンジンをコントロールする『スロットルボディー』と呼ばれる部品だった。

   それが今、この部品の一部は、燃費効率向上のために電子基板に置き換わった。

   同社の技術者の4割はソフトウエア関連の技術者で占めている。

   小田垣社長は「今後、電気自働車が必要とするのは電力をコントロールできるシステム。それにスイッチできないと、会社の存在意義がなくなる」と言いきった。

   当然『ケーヒン』に部品を納入している下請けメーカーも厳しい荒波にもまれている。製造していた部品を次々電子部品に置き換え、この4年の間に、従来製造していた部品の70点が消えていった、という。

脱自動車の動きも

   しかし、こうした奔流の荒波に乗れない部品メーカーを待ち受けているのは、倒産か廃業。なかには進んで廃業するメーカーも。

   廃業を決めた部品メーカーの社長は「今後、戦っていく見通しがない。余裕のあるうちに清算していまいたかった」と、湿りがちの口調で語った。

   キャスターの国谷裕子は「部品メーカーはどの程度減っていくのでしょうか?」と。

   番組に生出演した日本総合研究所の宮内洋宜・創発戦略センター研究員は次のように語る。

「自動車産業は『垂直統合』産業の最後の聖域だったが、このピラミッドが急速に小さく萎んで行こうとしていると考えています。ただ、すべて電気自働車になるわけではない。
   アジアの成長市場は、これからガソリンエンジンの自動車が普及するだろうし、バイオ燃料で走る自動車もこれからだ。要は、筋肉質になって体力をつけ、戦いに生き残ること」

   そうした中で、苦境を乗り切るために脱自動車を目指す部品メーカーも出てきた。

   鉄と比べ重さは5分の1、強度は3倍という炭素繊維複合材を得意の金型技術を駆使し、人のやらないことを先取りしようという試み。

   あるいは、自動車部品メーカーなどの下請けメーカーが得意技術を出し合って協力する『チーム』を結成したところもある。

   ピラミッド型産業の典型と言われた自動車産業だが、そこで働く従業員は、全就業人口の8%、515万人。主役の座交代が及ぼす影響は大きい。

モンブラン

   *NHKクローズアップ現代(2009年10月28日放送)

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