愛し愛されるため 「きちんと食べないと」

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   <テレビウォッチ>この日のテーマは「『食』がいのちを救う」。めずらしくスタジオを出た国谷裕子が、料理家・辰巳芳子を鎌倉市の住いに訪ね、広い庭の一角に据えられたテーブルを挟んで話を聞く形をとる。テーブルには、その日、朝、辰巳家の庭で収穫されたというヤマミツバ、サトイモ、柚子などが置かれている。

   番組はまず、『食』への関心が薄い人たちの生活を見せる。神戸市の社会人1年生、独り住まいの女性は、主食代わりにお菓子を食べるような毎日を送っている。「作る時間があれば寝ていたい。お腹が空くから仕方なく食べる感じ。膨れさえすれば何でもいい」と彼女は言う。駅前の献血ルームで献血を申し出るが、血液の濃度が足りないと断られる。血液をつくるたんぱく質や鉄分などをはじめ、体に必要な栄養素が不足しているのだ。

「サプリメントが合理的」

   作家・大学教授(50)の男性は、カップ麺やお菓子を主食とし、食後にサプリメントを欠かさない。「食は、生きて行くための最低条件では、最早ない。手っ取り早くバランスよくサプリメントを飲むのが合理的」と語る。サプリは学生時代から続けて、今では1日に60種、300錠を超えるという。

   こうした傾向について辰巳は「お気の毒なところがある。食べさせられた経験に乏しい。自分自身も食べる練習量が足らない」とし、「人間の味覚って、微妙で、そんなに発達しているものじゃないようだ。学習がないと、いつ、何を、どこで食べたらいいか分からないものらしい」と話す。

   『いのちを救う』例は後半に紹介される。介護や医療の現場での取り組みだ。ここでは、重症患者たちが、「食」を与える側の工夫と、本人の必死の訓練によって、食事を経口摂取できるまで回復する姿が印象的にリポートされる。脳幹梗塞のため全身に麻痺がある男性(55)は、瞼の動きで「食べることは生きている証し」と伝える。また、脳出血で倒れ、一時、意識がハッキリせず話せなかった男性(73)は、ことばや笑顔が出るようになる。この人の主治医は、匂いを嗅ぎ、噛んで飲み込む食事の動作が、脳に刺激を与え、回復に結びついた、と指摘する。

   最後に「食」に無関心な若者に向けて辰巳はこう結んだ――自分のいのちを守るはずのものを食べてほしい。そこに呼応が生まれ、自分のいのちへの手応えを感ずる。手応えは自分のいのちを頼ること、信ずることに繋がる。そして、人に対して信じられることに繋がって行く。信じられるということがないと真の希望が育たない。信じられることと希望が持てる中で愛することを学んで行く。愛することで、おのずから愛が宿る。愛すること、愛されること抜きに人生は考えられない。愛することのできる人、愛される人になるためにきちんと食べなければならない――

   国谷によれば、日本人の1日当たり平均摂取エネルギーは、1975年あたりをピークに徐々に減少し、2007年は1898Kcalで、終戦直後の1949年を下回っているという。辰巳が期待する『食』のレベルまで持ち上げるには、厳しい状況のような気がする。

アレマ

   * NHKクローズアップ現代(2009年10月29日放送)

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