「退院したら死ぬぞ」 生活保護食い物にするテク

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<テレビウォッチ>奈良・大和郡山市の山本病院が、診療報酬を不正請求したとして、理事長ら3人が詐欺の罪で起訴された。生活保護受給者は、医療費の自己負担がなく、診療報酬は自治体または国が全額負担する。この制度の悪用である。

   病床80のうち6割を生活保護受給者が占め、この7割以上が、症状もないのに狭心症のカテーテル検査や治療を受けていた。また嫌がるのをベッドにしばりつけて、検査されたという患者がいた。

転院させ検査漬け

   年間300件のカテーテル検査は、同規模の病院の中では、突出している。元看護士は、「月に20件というノルマがあった。また、家族のない患者が多い。亡くなっても追及されることがないから」という。

   裁判で理事長は、「病院の新築で5億円の借金をした。経営を安定させるため、生保患者にできるだけ手術をした」といっている。カテーテルの検査は1件60万円から100万円以上。ほかにカテーテルの納入業者から200万円のリベートをもらっていた。

   同病院の不正情報は、10年も前から奈良県などに寄せられていたが、診療の内容まではわからなかった。また、患者の側にしても、病院にいる方が路上生活よりはいいからと、声にならないのだという。

   調査が進むにつれて、これら患者が山本病院と大阪のいくつかの病院を転々としている実態が浮かび上がって来た。奈良県が調べた437人は、ほとんどが入院1-2か月で転院、平均が5回、最高が9回だった。

   山本病院にいたことのある66歳の男性は、大手製鉄所をやめて日雇いをしていた。60を過ぎて仕事もなくなり、野宿をしているときに、3人の男に声をかけられた。「生活保護を受けないか」と。

   男性は、アパートに住めると喜んだが、入れられたのは病院だった。医師は、「心臓が悪い。重症だ。退院したら死ぬ」といい、2週間後に転院。その後8つの病院を「たらい回しみたいにぐるぐる」。山本病院には2度入ったという。

   入院費は2週間までは日に1万7280円だが、30日を過ぎると1万3000円に減る。それまでに検査をして、入院費が安くなる前に転院させ、その先でまた、検査から始まる――という筋書きだ。

   ある医師は、「無駄な医療費を使った『貧困ビジネス』だ」という。また、「生保患者は、長年のすさんだ生活で、糖尿や肝臓病などが慢性化している。ほかに行くところがない人たちの受け皿」という職員も。

なぜ見抜けないのか

   なぜ見抜けないのか。NHK奈良の稲垣雄也記者は、「(1)医師の判断を、専門知識のない行政が覆すのは難しい(2)生保関連の診療報酬請求は、大阪だけでも258万件。全部のチェックは無理」という。

   鈴木亘・学習院大学教授は、「生活保護費の半分が医療費に使われている。本来必要な生活費にいかず、また本来必要な人たちにもいっていない」という。この結果、本来生活保護を受けるべき人の「2割しか受けていない」と。

   手だては? 鈴木教授は「患者データの電子化。これで不正を追跡ができるようになる」。さらに、「川崎の例が参考になる」といったが、時間切れで内容はわからずじまいだった。

   かつて、「国の金を食い物にするくらいうまい商売はない」とうそぶいた建設業者がいた。発想は同じだ。生活保護受給者の医療費は1兆3000億円、10 年前の1.4倍だという。このうち、どれくらいが「食い物」になっているのか。

                                        

ヤンヤン

* NHKクローズアップ現代(2009年11月2日放送)

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