「清張」刑事・ビートたけしが寄せた 被害者たちへの哀惜

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「ビートたけしドラマ 点と線 特別バージョン」(テレビ朝日)2009年11月8日 21時~

   以前に2夜連続記念ドラマとして放映されたものの再編集版。今度はナビゲーターに石坂浩二が出てきて、4分間のトリックの説明をする工夫が凝らされていた。内容を原作も含めて全部知っているのに、なお鑑賞に耐えた。脚本(竹山洋)、演出(石橋冠)の功績だ。
   寂しい九州、香椎の海岸で情死したカップルが、実は殺人の犠牲者だったという古典的なテーマである。ドラマは昭和32年が舞台だが、殺人の動機が政財界の汚職の構造のなせるわざであり、自死を装っての殺人といえば、平成21年の現在でも、全国的にゴロゴロと起こっている今日的な問題でもある。まことに人類は進歩がないというか、心の闇のテーマは普遍的というか。言い換えれば、松本清張は人間の業を喝破する眼力があったということだろう。
   このドラマで特筆すべきは、原作では主人公でもなく、ちょっとしか登場しない、九州の冴えない初老の鳥飼刑事(ビートたけし)を、物語の中心にもってきたことである。ボソボソした語り口に、亡妻手作りの帽子を被った生活感溢れる姿が、今時流行りの、上から目線のエリート刑事たちとは対極にある人情家と思わせる。殺されゆく末端の被害者たちに、セリフでは言っていなくても、鳥飼刑事がどれほどの哀惜を寄せたかと感じさせる存在なのである。
   映画監督としても世界的、キャスターをやれば高視聴率、名作ドラマの主演俳優と、才能豊かとはいえ、ビートたけし、欲張りだ。

(黄蘭)

採点:2.5
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