「日本人が果物食べ続けるの難しく…」 何が起きているのか
<テレビウォッチ>温暖化の波が果物も飲み込んだ、ということだろう。殆どありとあらゆる果物に異変が生じているらしい。
巨大化したリンゴや洋梨、色づきの悪い巨峰、浮き皮状態のミカンなどが登場する。浮き皮とは、スタジオゲストの森永邦久(農業・食品産業技術総合研究機構研究管理監)によれば、ミカンの果肉と皮の間にすき間が出来る現象で、夏の高温多雨のために皮の組織が崩れ、皮と果肉が離れて起こるのだという。
4日もつミカン、今年は1日
ミカンについては、「今年は糖度が多く酸が少ない分、痛みが早い」と、静岡県のスーパー店員が嘆く。例年は4日もつが今年は1日で悪くなり始めるのだそうだ。
なぜ、こうした異変が生ずるのか。番組は以下のように説明する――順当であれば、春に花が咲き、花が実になって夏の気温の上昇とともに成長し、秋に気温が下がることによって表面が色づき、甘くなるのを待って収穫する。ところが、温暖化の影響で春の開花時期が早まり、秋になっても気温が下がらないために着色時期が後ろにずれ、収穫が遅くなる。その結果、果実の成熟期間が長くなっている――
専門家は「木になっている期間が長いと果実がどんどん肥大する。大きくなればなるほど果実は柔らかくなり貯蔵性も低下する」と言う。
もう1人のスタジオゲスト、大島有志生(千疋屋総本店常務)は「甘みと酸のバランスが崩れ、甘ったるいものが出来たり、酸味が強いものが出来てしまう」と、辛そうに話し、別の専門家は「日本人が果物を今のように食べつづけるのは難しくなる」と語る。
技術開発と新品種
番組が示す50年後のミカンの生産地図では、現在の名産地である静岡、和歌山、愛媛の各県でも、気温が上昇して栽培に適さない所が出てくるらしい。
国谷裕子キャスターから対応策を問われた森永は「短期的には、浮き皮対策とか着色対策の技術開発をしており、浮き皮対策はメドが立っている。中長期的には新しい品種づくりを進めて行こうと思っている」と答えた。
各地の生産農家、研究者たちが、給水設備を作ったり、品種改良に取り組んだりするなど、「世界の中で最も質の高い、おいしい果物をつくる国」(国谷)のブランドを守るために努力する姿も紹介される。
が、四季の移り変わりが曖昧になってきている状況では、蟷螂の斧のような気がしてならなかった。何よりも、温室効果ガス削減などの恒久的な温暖化対策が講じられなければ、うまい果物は遠くなる一方だろう。
アレマ
*NHKクローズアップ現代(2009年12月10日放送)