鶴瓶「神がかり」演技 圧巻の説得力(09年ベスト映画上)

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(C)2009『Dear Doctor』製作委員会
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<ディア・ドクター>『グラン・トリノ』『チェンジリング』『レスラー』『スペル』『四川のうた』『母なる証明』など、今2009年は外国映画の秀作が目白押しだった。対して、今年の日本映画は有名監督の作品が少なかった印象。そして、漫画や小説の映像化作品が多発。その反面、『へばの』や『TOCHIKA(トーチカ)』などの力強い自主制作映画の活躍も目立った。

   その中で、西川美和監督の『ディア・ドクター』は段違いの存在感を放った。個人的には小林政広監督の『ワカラナイ』に大きな衝撃を受けたが、トータル面で考えて今年のナンバーワン日本映画は『ディア・ドクター』に決まりだろう。

監督の洞察力と演出力

   昔は医者が在籍しなかった山あいの小さな村で、神様仏様以上の存在と慕われる伊野医師の「失踪」をきっかけに、物語が展開されていく。この映画のすごさは、「サスペンス」という枠組みを簡単に飛び越えていることにあるのではないか。西川監督は力強く、執念深く、あくまで「人間」を、「日常」を、描き続ける。

   香川照之、八千草薫、余貴美子などの脇を抱える役者を始めとして、とにかく役者が良く、「人間の会話」が成立している(これが出来ない映画がとにかく多い!)。そして何といっても「嘘」を抱えた伊野医師を演じた主役の笑福亭鶴瓶が、もう、神がかっている。その「説得力」は圧巻で、この役はこの人以外演じられなかったと思う……というか、そう決め付けてしまおう。

   台詞の間の感覚の良さ、そして何と言っても悪役にも善人にも見えるあの顔! 今年は『南極料理人』や『クヒオ大佐』など4作品に出演した堺雅人の活躍も光ったが、鶴瓶の存在感には遠く及ばない。

   しかし、この30代の女性監督は末恐ろしい(しかも、とびきりの美人)。脚本はとにかく力強く、人間を見る確かな洞察力を併せ持ち、そこに女性独特の柔らかい演出力が加わるのだ。

   女性監督の台頭が目立つ近年の中でも、別格の存在であろう。一体どれほどの男性映画監督が、この作品を観て嫉妬しただろうか。戦意を喪失した者もいるかもしれない。何より凄いのは、鶴瓶のキャスティングが結果オーライではなく、しっかりと見極めて起用したに違いないという説得力があることだ。<テレビウォッチ>

川端龍介

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日本ジャーナリスト専門学校
通称ジャナ専。東京都豊島区高田にあるマスコミの専門学校。1974年の開校以来、マスコミ各界へ多くの人材を供給し続けている。

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