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ツイッター企画バカ売れ 「負けた」雑誌のつぶやきとは(上)

   新聞も週刊誌も、小沢民主VS.検察の全面戦争についての記事ばかりが目立つ中、「週刊ダイヤモンド」の「2010年ツイッターの旅 140字、1億人の『つぶやき』革命」<Chapter 1 ツイッター旋風上陸! Chapter 2 「やらずに書けるか!」 Chapter 3 ツイッターで企業も変わる> が完売し、増刷したことが業界の話題になっている。

   これこそ「人の行く裏に道あり」である。日本中が小沢問題に関心があるわけではない。最近、鳩山首相でさえも「つぶやき」始めたTwitterに対する関心の強さは、「Twitter社会論」(津田大介著・新書y)がベストセラーの上位にあることでもわかる。

お勉強好きな世代

   本を買うまでもないが、わかりやすくTwitterについて書いてある雑誌がほしいという「ニーズ」は多くあったのだ。

   こうした企画が、なぜ一般週刊誌から出てこないのだろう。特に、サラリーマンのための週刊誌を謳っている現代は、今からでも遅くないから、大特集を組めばいいのに。

   Twitterなんか50代や団塊世代には関心がないなどと決めつけているとしたら間違いだ。この世代は、もともと「お勉強」が好きなのだ。私が新米編集者だった1970年代、「コンピューターを知らないと、君は出世できない」という企画で、月刊「現代」や週刊現代が売れていた。今の世の中の流れから取り残されたくないと内心あせっていて、ひそかに勉強したいと考えている人たちが、この世代には多くいるのだ。また、そうしたものを扱うことで、下の世代も取り込むことができるかもしれない。

   ケースは違うが、私のささやかな編集長時代の経験を話そう。尾崎豊という若者たちのカリスマ歌手が亡くなったのは92年4月だった。それから1年後の4月、私は、次週の現代のトップ記事がなくて困っていた。

   そこへ、若い編集部員が「1年後にわかった尾崎豊『死の真相』」という企画を出してきた。恥ずかしながら、その時、私は尾崎豊が何者かを、ほとんど知らなかった。部員は、尾崎は若者たちの神であり、今でも熱心なファンが多くいることを熱く語った。

   売り物の記事がないこともあって、たまにはこうした記事で穴埋めするのもいいかと、気まぐれでそれをトップ記事にしたのだ。すると、発売と同時に、販売から、すごい売れ行きだという報告が入ってきた。それも、これまで、現代を手に取ったことがなかった女子高校生たちが、挙って現代を買っているというのだ。

「自分が読みたい記事を書け」

   ノンフィクション作家の佐野眞一さんが、私にこう語ってくれたことがある。「かつて『新潮45』が、えらく停滞していたときがある。そのとき、もう80歳を超えていた斎藤十一(新潮社の伝説の名編集者=筆者注)が乗り出してきて、雑誌の命はどういうことかということをいった。それは何かというと、こういう企画をやれば人様に喜ばれるとか、こういう記事を書けばあいつが喜ぶとか、そんなことは金輪際考えてはいけない。絶対考えてはいけない。そうではなくて、自分が読みたい記事を書け。これは雑誌作りの鉄則だといったのです」。

   私も常々、編集部員が30人いれば、それぞれがおもしろいと思っていることが30あるはずだ。一人ひとりが、そのおもしろさを読者に伝えていけば、その記事に100人、あるいは数千人の読者がついてくれるはずだ。

   今の若い編集者には、自分がおもしろいと思うことが見つからないと嘆く輩が多いと聞く。これぞ編集者失格である。<へ続く>