その時ニコリともしなかった 藤田まことの矜恃と品格

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「藤田まことさん追悼 日曜洋画劇場特別企画 はぐれ刑事純情派・最終回スペシャル」(テレビ朝日) 2010年2月21日 21時~

   かつて、あるテレビ賞の選考会で選考委員をしていた筆者は、優秀個人賞を受賞した藤田まことに祝賀パーティーで挨拶されたが、彼はニコリともしなかった。大物の雰囲気を漂わせ、媚びなかった。数年経って、新宿京王プラザホテルのレストラン・樹林で、藤田が取り巻きと一緒に出て行くのを目撃した。猫背になっていた。
   藤田は味のある俳優になったが、原点は喜劇人でもなく司会者でもなく、歌手として類稀なる才能の持ち主だったと思っている。どこの小屋だか忘れてしまったが、彼が東海林太郎に扮した舞台を見たことがある。あの、直立不動の姿もそっくりだったが、東海林の「赤城の子守唄」を、ご本家の歌唱を真似ながらも、ご本家よりもうまく朗々と歌い上げて感動した記憶がある。また聴きたかった。
   「はぐれ刑事」の最終回は、安浦刑事の人情ものスペシャルとでも名付けたい内容で、無実の青年を安浦が最後まで信じて救い出す話である。その中で、青年に懇々と諭すシーンがあるのだが、ドラマ後に監督が、「あれは藤田さんの意思でアドリブで入れられたセリフだった」と明かした。人気シリーズの最終回というので、藤田まことにも格別の思い入れがあったのだろう。
   藤田は夫人の事業失敗による借金まみれなどマイナスイメージの報道もなされたが、今時のお笑い芸人とは一線を画す品格があったから筆者は好きだった。若すぎる死だが立派な代表作も残した。

(黄蘭)

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