広島発「大賞」ドラマ その演出と女優の出来

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「火の魚」(NHK総合) 2010年3月13日 21時~

   文化庁芸術祭のテレビドラマ部門で大賞を受賞した作品である。以前、筆者はBSで放送された時にも見た。室生犀星の短編が元になっているが、ほとんどオリジナルに近い。ガンに罹り、広島県の小さな島に帰り、時流に媚びた不本意な作品を書いて糊口を凌いでいる老作家・村田(原田芳雄)のところに、いつもの担当者でない折見とち子(尾野真千子)という女性編集者が原稿を取りに来る。
   こっぴどく作品をけなされても村田は折見に惹かれてゆく。単行本の装丁に使う金魚の魚拓をムリヤリ折見に作らせた時、いつも冷ややかな彼女が涙を流すのだが理由はわからない。後にその意味が判明する。命は年齢に関係なく、誰の上にもかけがえなく与えられ、神のご意思のままに存在するが、また、不意に奪われもする。
   淡々と地味にドラマは進行しながら、ピリッと緊張する瞬間があり、最後にハッタと己を顧みさせられるような結末になる。演出(黒崎博)が素晴らしい。黒崎はこの作品で芸術選奨も取った。一気にスター演出家の仲間入りである。地方発(広島)作品大ヒットだ。
   ドラマは長けりゃ良いというものではない。本作は55分である。また、民放で手垢まみれの美人女優より、多少不器用そうだが普通らしさを失わない尾野のよさが際立つ。勿論、頑固な老作家になる原田の存在感が圧倒的で、彼はフジテレビ「不毛地帯」での社長役でも、強烈な大阪弁で抜群の個性的演技を披露している。

(黄蘭)

採点:2
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