「バーリンホウ」が守旧中国に風穴を開ける

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   変容する中国のいまを上海から国谷裕子が3回にわたってレポートする。初回は、「80后(バーリンホウ)」と呼ばれる80年代生まれの若者たちだ。 21歳から30歳まで2億人。彼らの意識、行動の変化に、中国の将来を探る。

新人類

   彼らは改革開放政策と一人っ子政策のなかで、豊かに育ってきたいわば「新人類」だ。古い習慣や考えにとらわれず、ネットによって広く情報を得て、自ら発信し、行動し、時に政府批判もする。これが、文化、芸能、スポーツ、ビジネス、政治とあらゆる分野に及ぶ。

   3人の28歳が登場した。

   ネットのショッピングサイトを運営する男性は、「われわれの世代は正しいと思った道を進む。失敗を恐れない」という。小学生のころからパソコンのプログラミングを学び、15歳で起業した。いま、個人資産6億円。上海郊外の高級住宅地に1億円の邸宅を持つ。

   昆明市の副局長をつとめる夏佳さんは公共事業担当だが、まん延する汚職の撲滅にも取り組む。以前は裁判官だったが、共産党が公募した幹部候補生制度に通り、普通なら20年はかかる副局長のポストにこの若さで就いた。部下はみな40代だ。日本のお役所では考えられない話である。

   もう1人は世代のエースともいえる韓寒さん。17歳で作家デビューし200万部の大ヒット。いまはカーレーサーでもある。今年、米タイム誌の「世界で影響力のある100人」の候補になった。4年前から始めたブログは、アクセスが3億5000万回を超えた。チベット問題を皮肉ったり、役人の腐敗を茶化したりが、「苦情や悩みの代弁者」「精神的楽園」などと、若者たちから強い支持を得ている。

当たり前の権利

   国谷のインタビューを受ける韓寒さんは実にクールだ。まずブログについて、「みなうっぷんを晴らしている。わたしのブログは公衆便所みたいなものだ。用を足して、生活が変わるわけではないが、公衆便所は必要なんです」

   世代についても、「バーリンホウは簡単にだまされないし、変な思想に左右されない。世界情勢もわかっているし、正邪の別も理解している。ただ、まだ権力も地位もない。権力を監視できないから現状を打開できない」

   2年前の四川大地震では、多くのバーリンホウがボランティアとして現地に入った。その前の世代にはなかった動きだ。以来、市民活動に携わる者が増えている。水質汚染の告発を続けているNGOの張亜東さん(25)は、政府批判も辞さない姿勢が海外からも評価されている。しかし、権力は容易には動かない。

   韓寒さんは「デモをすれば逮捕される。四川大地震は堂々と行動を起こすきっかけになった。国民はだれもが社会正義を望んでいるが、バーリンホウの意識はより強い。権力も既得権益もないから声をあげ続けるしかない」

   国谷が「欲しい権利は」と聞いた。

「ここで話すのは難しいが、他の国なら当たり前の権利を持ちたい。民主化運動で大きな代償を払った天安門世代は、いま既得権益世代になったが、われわれは20年30年経っても、いまのままのバーリンホウでありたい。中国の進歩とはそういう社会を作り出すことだ」

   これは、やがて共産党独裁とぶつかることになるだろう。10年20年経てば、次の世代も育つ。そのとき彼らはどこにいるのか。

                                        

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2010年4月26日放送)
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