上海万博の裏で崩壊する庶民の暮らし

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   5月1日の上海万博開幕を控えて、現地から届けるクローズアップ現代「シリーズ 中国・転換のとき」。第2回は「築けるか『ベターライフ』」だ。

親孝行契約書

   老人がたむろする朝の公園を国谷裕子キャスターが歩いている。公園では体操、ダンス、バドミントンなどを思い思いに楽しんでいるが、中国の都市のなかでも、上海はとりわけ高齢化が進行しているという。

   その高齢者たちはいま、きびしい生活環境に追い込まれている。かつては大家族で、老人たちは子供や孫に囲まれて暮らすのが当然だったが、一人っ子政策などの影響で子供との別居が増え、家族の絆は希薄になり、中国でも老人の孤独死が社会問題になっている。急激な発展は豊かさをもたらした反面、メンタルなダメージも与えたと心理カウンセラーの林貽真さんは解説する。

   「(社会主義から自由経済への)大きな変化を経験したいまのお年寄りたちは、自分たちの過去を否定された気持ちになっている。理解してもらえないさびしさや、評価されないという辛い気持ちを抱えている」

   そんななか、上海のある区では奇妙な契約が5000件以上結ばれた。「親孝行契約書」である。パパやママの肩叩きをしたら1回10円あげるといった契約ではない。行政が年寄りの親と離れて暮らす子供に対し、「親孝行をします」という契約書にサインさせるのだ。具体的には、毎日電話する、週に1度は訪問、掃除、通院の付き添いをするといった内容。契約違反を続けると、区の担当者から「指導」が入る。番組では不動産会社で働く『親不孝娘』を取材していた。

   「母には会いたいが、本当に時間がない」と彼女は弁解する。収入は増えたが、物価も急上昇。マンションのローン返済に追われ、家事、育児、子供の勉強で手一杯。最近は仕事先で英語能力を求められ、その勉強にも時間を割かなければならない。「自分自身も勉強して能力を高めないと。そうしないと競争に負けて、仕事を失いかねません」。彼女は険しい表情で語っていた。

   史上最大規模といわれる万博開催地・上海の繁栄は、こうした労働者たちの高負担、老人たちへのしわ寄せで支えられているということだ。

ボンド柳生

NHKクローズアップ現代(2010年4月27日放送)
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