「世界の下請け工場」はもう御免。トップブランドの開発急ぐ中国

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   改革・開放から30年。安い労働力を提供し、[世界の下請け工場]として年率10%前後の経済成長を駆け抜けてきた中国が今、転換点を迎えている。日本を抜いてGDP世界第2位に躍り出ようとしている中国は、どこへ向けてカジを切ろうとしているのか。シリーズ[中国・転換のとき]3回目は、国谷裕子キャスターが万博開幕(5月1日)を間近に控えた上海から、官民で進める『構造転換』の現状を伝えた。

中国のユニクロ

   13億人という膨大な人口。いくら安い労働力が武器とはいえ、利益の少ない『世界の下請け工場』の役割にいつまでも甘んじてはいられない。そんな思いで[脱・外国の下請け工場]を目指し、13億の巨大消費市場を視野に入れて自主ブランドの開発に成功した企業がある。

   番組が取り上げたのは、中国のユニクロと呼ばれるアパレルメーカー『メーターズ・ボンウェイ』(本部・上海)。中国のカジュアルファッション市場の規模は5兆円といわれる。この市場を狙ってユニクロが今月7日に上海に新店舗をオープンした。900店舗以上ある直営店の中でも、最大規模という力の入れようだ。

   しかし、実はユニクロなどの外国ブランドの中国シェアはごくわずか。メーターズ・ボンウェイのオリジナルブランドが市場を席巻しているという。10代から20代の若者の間で爆発的な人気を得ており、09年の売上高は前年比50%増の1400億円。2秒に1着が売れている計算だ。

   このブランドを作りあげたのが45歳の周成建会長。もとは外国ブランドの下請け工場を経営していた。しかし、注文は増えるものの利益は思ったほど上がらず、15年前に工場を閉鎖してオリジナルブランドの開発に取り組んできた。その周会長が次のように語る。

「外国ブランドの下請けは、他人の利益のために働いてきたにすぎなかった。中国独自のブランドを作ることこそ生き残る道と確信した。
10年、20年前には、中国でブランドといえば外国ブランド。しかし今は違う。中国ブランドも素晴らしいと思うようになっている」

内陸部にも広がる豊かさ

   この自信の背景には、豊かさが中国沿岸部から内陸部へと徐々に広がり、巨大な消費市場として浮かび上がってきたことがある。この奥の深い消費市場のニーズを的確にとらえた同社の戦略が、功を奏しているのだ。

   メーターズ成功の秘密の一つが、同社の心臓部に当たるデザイン部門である。世界の流行をいち早く取り込むため、外国ブランドのデザインを徹底的に研究。フランスから一流デザイナーもスカウトした。その一方で、広大な国土の多種多様な消費者ニーズに応えるため、全国各地から130人のデザイナーが集められた。現在、デザイナー全員が年4回、全国各地に出向きマーケティング調査を行っている。外国ブランドには真似のできない情報収集力で、年間5000点以上の新たなデザインを生み出しているという。

   同社のもう一つの強みは工場を持っていないこと。外国企業の下請けで高い技術力を身に付けた縫製工場を見つけ出し、そこへ生産を委託しているのだ。

   周会長は「中国市場は地方によって消費習慣の違いが多く、販売システムも地方によって差がある。我々の強みはそうした市場の全体像を把握できる力があること」と説明する。すでに3000店舗以上あるが、5年後には1万店舗に増やす計画だ。

急げ!と檄を飛ばす温家宝

   中国で動き始めたこうした構造転換は、民間の軽工業だけにとどまらない。ハイテク産業などで、政府はブランド力、技術力のある国家への転換を急いでいる。3月に開かれた第11回全国人民代表大会で、温家宝首相は「中国の構造転換は一刻の猶予も許さない。さらに勝利を!」と声高々に宣言した。

   急ぐ理由について、中国成長モデルの転換を提唱する中国経済研究センターの陳釗副主任(復旦大教授)は、国谷のインタビューに次のように答えた。

「今のところ、中国企業は安い労働力を武器に激しい競争を繰り広げている。しかも、どの企業も似たような製品しか作れない。市場状況が変わり、需要が減ると持ちこたえられなくなり、アッという間に倒産です。今後生き残っていくには、安い労働力に頼るのではなく、ブランド力を築き、利益率を上げることが不可欠なのです」

   中国がこうしたことを学んだのは、外需の冷え込みで企業が次々と倒産した先の世界的な金融危機だという。あの時、日本は何を学んでいたか。政界のことは今さら言うまでもない。民間にも日本経済を牽引するダイナミックで明確な戦略が見えてこない。官僚は天下り先を確保するのに四苦八苦。このままでは中国市場に飲み込まれてしまうことになりかねない……

モンブラン

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