「人類絶滅の危機」生き残った女子高生が見たおぞましい未来

印刷
(C)YUJI IWAHARA/PUBLISHED BY ENTERBRAIN, INC./Team IBARA
(C)YUJI IWAHARA/PUBLISHED BY ENTERBRAIN, INC./Team IBARA

<いばらの王 King of Thorn>世界各国で評価の高い岩原裕二 のコミック『いばらの王』を『スチームボーイ』や『FREEDOM』のチームが製作したアニメーション映画。ロカルノ国際映画祭で上映されるなど、映画でも海外からの注目を集めている。

漫画原作だがよく練られた映画シナリオ

   2012年、感染後半年以内で石化するという致死率100%の奇病「メドューサ」が世界中に蔓延し、人類は絶滅の危機を迎えていた。世界中の政府機関がメドューサに対して何の対策も打てない中、製薬会社ヴィーナスゲート社が大胆な計画を発表する。それは、治療法が確立する未来まで人類を冷凍睡眠させておくという『コールドスリープ計画』であった。その計画に参加できるのは抽選で選ばれた160人のみ。

   スコットランドの古城を改造した施設に当選者が集められた。その中の一人、女子高生のカスミには双子の姉シズクが付き添っていた。離れ離れになるのは嫌だと参加を拒んだカスミをシズクが半ば強引に連れてきたのだ。姉の分まで生き延びるために、カスミはコールドスリープに入った。が、目覚めたカスミを待ち受けていたのは、いばらに覆われた変わり果てた施設と恐ろしいモンスターたちだった。世界で一体何が起こったのか。

   本作は最近のマンガ原作の映画には珍しく、原作から映画シナリオへ昇華するための試みが随所に見られる。たとえば、オープニング。ニューヨークのビルから飛び降りた一人の少女の石化した体が地面に砕け散るというファーストシーンで、観客は作品世界に引き込まれる。その後、奇病メデューサの情報を現実世界さながらにテレビニュースの映像を通して伝えることにより、非現実的な作品世界に見る者を自然と馴染ませる。始まって数ページでコールドスリープ計画が開始される原作の展開と比較すると、映画的な魅力の詰まったオープニングに再構築されていることが分かる。

   オープニングだけではなく、コールドスリープ後の展開にも変更が加えられ、『古城からの脱出活劇』という原作での売りがより引き立っていた。原作者の岩原裕二 はB級映画をコミックでやりたかったと言っているが、そこは映画でも大成功。ゾンビこそ出てこないが、次々と現れるモンスターを間一髪のところで倒していく展開は、スリルと興奮に満ちている。

   しかし、映画の終盤、メドューサに隠された秘密やこの異常事態と双子の姉カスミとの関係などさまざまな謎が解明されていくのだが、そこで映画は見事に失速してしまう。意外性のある結末は用意されてはいるが、張りすぎた伏線を焦って回収しているような印象が拭えない。結果、モンスターを倒したときの爽快感は消えてしまい、謎が解けないもどかしさが残る。中盤までB級映画的な魅力に溢れていただけに残念だ。

野崎芳史

   オススメ度 ☆☆☆

  • コメント・口コミ
  • Facebook
  • twitter
コメント・口コミを投稿する
コメント・口コミを入力
ハンドルネーム
コメント・口コミ
   

※誹謗中傷や差別的発言、不愉快にさせるようなコメント・口コミは掲載しない場合があります。
コメント・口コミの掲載基準については、コメント・口コミに関する諸注意をご一読ください。

お知らせ

注目情報PR
追悼
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中