出遅れの「スマートフォン」 追いつけるか日本企業
日本の携帯電話市場に異変が起こり始めている。将来あらゆる携帯端末の基盤になる機能を秘めているといわれるスマートフォン。アメリカからやってきたこのスマートフォンが市場を席巻する勢いで伸びているのだ。電話やメールなど通信機能に軸足を置き、ワンセグなどの高機能を世界に先駆けて搭載してきた日本の携帯電話会社やメーカーも、この勢いを無視できなくなり、今春から追いつき追い越せと走り出している。
番組は、さらなる進化へ向けて走り出した日本企業、ライフスタイルを変えるといわれているユーザーたちのスマートフォンを巡る動きを追った。
いまや就活の必需品
スマートフォンの最大の特徴は、インターネットの膨大な情報から、いつでもどこにいても好きなものを取り出せるほか、ゲームを楽しんだり、楽器を奏でたりできる15万種類以上もある「アプリ」と呼ばれるソフトが大きな魅力になっている。
慶応大学大学院の古川享教授がスマートフォンの面白い使い方を見せてくれた。4つのボタンを押しながら息を吹きかけるとオカリナの音を出すことができる。それだけでなく、同時にこの楽器を世界のどこかで、だれかが楽しんでいれば、呼び出して会話もできるという。電話機能付き「携帯情報玉手箱」といったところか。
遊びだけではない。必需品になっているのが、いまや情報収集が勝負という学生の就活。ある女子大生は、就職説明会に参加の申し込みをしようとしても、従来の携帯電話では、企業のホームページが途中までしか表示されないことがしばしばあるので、自宅のパソコンで申し込みをしようとしたらすでに満席だったという。スマートフォンは「1台あれば何でもでき、なくてはならないもの」という。
なぜ後塵を拝したのか
このスマートフォンが日本市場を席巻するきっかけとなったのは、08年7月に発売されたアップル社の「iPhone」だ。世界22か国で同時発売され、日本ではソフトバンクモバイルが担当した。これまでの販売台数は推定で300万台。これほど急速に広がった携帯端末は近年ないという。
デジタル放送が見られるワンセグや高画質のカメラなど、高機能を誇る日本の携帯電話はなぜ出遅れたのか。ⅰモードなど、日本の携帯電話会社が管理するは公式サイトで十分とされ、日本市場ではⅰPhoneはそれほど受け入れられないとの予測が主流だったからだ。
通信機能に軸足を置く日本の携帯電話会社の弱点といえそうだが、インターネット接続に力点を置いたⅰPhone登場で消費者のニーズに火がつき、日本企業も無視できなくなったようだ。
そこで、今春から各社が打ち出しているのは、ⅰPhoneと同じようにインターネット接続機能を持ち、同時にワンセグなど日本で人気の機能を搭載したスマートフォンだ。
日本固有の機能生かせば……
キャスターの国谷裕子が「ⅰモードでいち早く携帯にインターネット接続機能を始めた日本が、スマートフォンにどういうふうに生かしていけばいいと考えますか」と、古川教授にたずねた。
「世界標準のスマートフォンより先行している機能がある。たとえば、携帯で電車やタクシーに乗れるとか。こうした固有の各種機能をスマートフォンに還元していってほしい。そうすることによって、ⅰモードの価値が世界で生きてくると思う」
社会生活の必需品となっていた携帯電話も、新たな段階に入ってきたのだろう。
ただ、若い人が歩きながら、あるいは自転車の乗りながら、携帯電話に熱中している姿も最近目立ってきた。電柱にぶつかるのを避けようとしてか、路上の真ん中を蛇行しながら一心不乱で下を見ているのは、ドライバーにとって迷惑このうえない。「どこでも、いつでも」というのがスマートフォンの特長だが、路上では控えてほしい。