台湾の小さな村で笑顔取り戻す母子3人のひと夏

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(C)2009 TOROCCO LLP
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トロッコ>ある夏、急死した台湾人の父親の遺灰を母国に届けるために、敦(原田賢人)と母親の夕美子(尾野真千子)と弟の凱(とき・大前喬一)は台湾の小さな村にやって来た。そこには日本語を話すおじいちゃん(ホン・リウ)が3人を迎えた。

   敦が父親からもらった大切な古い写真に写るトロッコがある場所をおじいちゃんは探してくれることになり、敦のひと夏の小さな冒険が始まった。行定勲などの下で助監督を務めてきた川口浩史の日台合作、初監督作品。

おじいちゃんと少年

   完璧な文章と言われる日本の「文士」芥川龍之介の同名短編小説を題材にしているが、近年の邦画に多く見られる人気原作コミックや小説をなぞるだけの2次創作とは異なり、原作が持つ空気を吸収し、現代的なストーリーに移し換え、オリジナルからオリジナルへの昇華を果たしている。それは芥川が中国や日本の古典(説話文学)を題材にオリジナル作品を創作したスタイルに通ずるものがある。

   また、『珈琲時光』『百年恋歌』などのホウ・シャオシェン作品でおなじみの名カメラマン、リー・ピンビンの「そこにあるものを撮る」というスタンスが、この作品に象徴的な映像世界を与えており、われわれを「異世界という現実」に引き連れる。

   テーマは「再生」。若くして夫に先立たれた夕美子は、人を思いやる余裕がない。それは息子たちにも影響を与え、とくに兄の敦は「お兄ちゃん」という理由だけで、大人になることを要求され、笑顔をなくしてしまう。日本での生活に疲弊した家族は、台湾の小さな村での生活により、ゆっくりと笑顔を取り戻していく。

   やがて、夕美子には「台湾に残りたい」という気持ちが芽生えるが、おじいちゃんはそれに反発する。理由はおじいちゃんが若き日に抱いた「日本人として生きる」という夢と関係し、日本統治時代の戦争の面影が現れる。

   父親が残した写真にあった旧日本軍が敷いた線路の上にあるトロッコ。その行き着く先はおじいちゃんが憧れた日本なのかもしれない。だが、その日本では3人の家族が触れた台湾の小さな村の共同体や家族の温かさが希薄になっている。

   戦争の跡と国境のない家族愛を、少年の心の変化と成長を通して描いた秀作。必ずや心の奥底に何かを与えてくれるだろう。

               

川端龍介

   オススメ度:☆☆☆☆

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