治療受けても認知症悪化 医者も気づかぬ「誤診」多数

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   正しい診断を受けていないため、かえって症状が悪化する認知症患者は実はかなり多い。認知症はアルツハイマー病や脳卒中などが原因と考えられていたが、最近の研究で数多くの病気が原因となって起きていることが分かってきた。その数およそ70種類で、アルツハイマー病はそのなかの一つに過ぎない。

   ところが、見分けるのが難しいため、正しい診断がされず、適切な治療を受けていない患者が数多くいるという。「クローズアップ現代」は誤診の実例を挙げ、その実態を探る一方、始まったばかりの国の対策に立ちはだかる問題点を追った。

家族の話が手がかりに

   群馬県に住む80歳の女性。2年前にアルツハイマー病と診断された。だが、薬による治療を始めてもいっこうに改善に兆しが見えず、逆に介護する家族に暴力をふるうことも多くなった。

   悩んだ家族は別の病院に助けを求めた。診察したのは認知症の専門医で、群馬大医学部の山口晴保教授だった。

   診察の結果、女性はアルツハイマー病ではなく、レビー小体型認知症と分かった。判断の決め手は、家族が話した女性にしばしば起こる幻覚症状だった。

   アルツハイマー病は少し前のことも忘れてしまうのが特徴だが、レビー小体型認知症は幻覚症状を伴う。しかも、患者自身は幻覚を意識できないのが特徴で、家族などからの情報が重要な手がかりになるが、そうした特徴をよく知っていないとなかなか診断がつかない。「抑肝散」という漢方薬が効くケースがあることが分かっており、これを使って治療したところ、女性は幻覚を見ることもなくなり、劇的な回復をしているという。

原因は大別して7つ

   なぜ女性を最初に診察した病院は、アルツハイマー病と誤診してしまったのだろう。山口教授は「背景には検査だけでは診断できない認知症特有の難しさがあり、そうした認知症の特性をよく知っている専門医が不足しているからです」と指摘する。

   認知症の大半は次の7つに集約されるという。アミロイドβという物質が脳にたまり、記憶をつかさどる部分に異常を起こすアルツハイマー病。α‐シヌクレインという物質が脳にたまり、視覚をつかさどる海馬に異常を起こすレビー小体型認知症。

   このほか、脳梗塞から来る脳血管性認知症、ピック病、正常圧水頭病、アルコール依存症から来る認知症、頭部のケガがもとで起こる認知症などだ。

専門医の決定的不足

   東京都健康長寿医療センターの粟田主一部長はこう話した。

   国谷裕子キャスター「診断がかなり難しいそうですが、どうやって診断をするんですか」

   粟田部長「特徴的な症状をとらえ、当たりをつけて画像検査をします。この診断に矛盾がないと判断されれば、薬などの処方をします。

   今回のケースのレビー小体型認知症は、医者が特徴をよく知っていたから診断ができました。一般の人には知られていない病名ですが、実際には非常に多いのです」

   認知症が疑われたら、専門知識や経験を積んだ医師に診断を任せることが必要なのだが、200万人以上といわれる認知症患者に対し、専門医は800人程度しかいない。

   国は認知症の誤診を防ぎ、適切な治療を行うための「認知症疾患医療センター」を全国150か所に設ける計画を進めているが、専門医が足りず、設置は半分に留まっている。

   国谷「なぜ専門医の育成が難しいのでしょう」

   粟田部長「専門医となると精神症状も診なければならないし、介護の問題もあります。医師として学ぶことが多く、仕事量が大変多いということで、なかなか増えない理由になっています」

   専門知識不足のために誤った診断を受け、かえって症状が悪化する認知症患者があちこちにいるということである。

モンブラン

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