芸人Iさんの読んでるだけで笑ってしまうネタ帳

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   仕事の合間に、自分のノートをぱらぱらとめくってみる。すると、さまざまな事柄が全く脈略なく詰め込まれていることにまず気づく。あるときは鉄道マニアについてのメモ、またある時は料理のレシピ。そうかと思うと、政治ネタ、はたまた2000年代のアニソンや同人音楽についてのリサーチメモ、次のページは上手な焚き火の起こし方といった具合だ。

   もし、学校の先生が見たら、通信簿に注意散漫と書かれそうなぐらい一貫性がなく、バラバラなことがバラバラに書かれている。

   ノートをめくりながらもう一つのことに気づいた。私のノートはどれも会議のメモや番組のためのメモで、いわゆるアイディア帳ではないということである。

   友人のプロデューサー(会社の中でもエース級)のノートには、絶えず日々感じた疑問や浮かんだアイディアなどが書き綴られている。番組の企画のかけらになるかもわからないようなことまで、日々なんとなく生活している中では、気をつけていないと見過ごしてしまいそうで、かつ多くの人の共感を覚えるような『あるある』がメモとして残されている。

   一方、私のノートはどれもこれも他人の言葉や他人を介しての出来事の羅列。そこには自分のまっさらなアイディアやネタなど一つもない。職業的にヤバイ?とさすがに少し不安になる。そんなことを感じつつも、すぐに忘れてしまうのが私の性格。そして、人によってでしか自分の考えを思い出せない自信のない生き方をしている。

自分のノートに自己嫌悪

   ある日、暑気払いにでも行きますか?と友人を誘って出かけた焼き肉店でのこと。「どうぞ」と店員に通された際、ふと隣のテーブルに視線がいった。そこには、いつも番組でお世話になっている芸人のIさんがいるではないか。

   「あ、どうも!奇遇ですね~。お近くですか」などとたわいない会話のあと、お互いの連れとしばし歓談。しばらくして、Iさんが声をかけてきてくれた。聞くと、彼は相方とネタの打ち合わせをした後で、友人と食事に来たらしかった。その話を聞いて、私は芸人さんのネタ帳なるものを見たことがなかったので、ノートを見せて欲しいと懇願してみた。

「これはほんとにメモっすよ。ここからいろいろ考えるわけで~」

   照れながらネタばらしをしてくれる芸人Iさん。ノートを見ると、時事ネタの羅列。そして、そこかしこに彼らならではの鋭いツッコミが書かれている。彼らのコントを見ているわけでもないのにクスっと笑ってしまう。

   「これ、すごい妄想はいってません? Iさん妄想族でしょ」と笑いながら尋ねてみると、 「芸人なんて、子供の頃から世の中の真ん中歩けないのを自覚してるもんよ。だから斜めから見たり、妄想したりするクセがついちゃうんだよね~。でも、それってオリジナルなアイディアじゃない?」と美味しそうにマッコリを飲みながらIさんが答える。

   目の前の仕事ばかりに気を取られ、妄想する余裕がなかったと返すと、「その真面目さがいらない。それじゃ世の中の真ん中の道走ってるだけだよ」と諭された。

   あぁ、それって自分のノートに現れている不足と過剰ではないか・・・。情報系番組を多く手がけているなどというのは言い訳に過ぎない。感覚を言語化する作業すらできていない我が身を恥じた。帰り道、付け焼刃のようにノートに記す。

「自分の感覚をもっと研ぎ澄ませ!イイ子になるな」

モジョっこ

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