北野映画がブチかます暴力と笑いと「全員悪人」のヤクザ群像

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(C)2010 『アウトレイジ』製作委員会
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   <アウトレイジ>北野武にとって15本目となる監督作品。関東の巨大暴力団の権力抗争を描き、久しぶりにヤクザを題材にし、キャッチコピーは「全員悪人」。北村総一郎、石橋蓮司、三浦友和、國村隼、杉本哲太、椎名桔平、加瀬亮などのバラエティー豊かな個性派役者たちの共演が実現した。

単純明快ストーリーのエンターテイメント

   作品は特定の人物を中心に話が進んでいくのではなく、いわゆる群像劇と呼べる設定になっており、とにかく人物が大勢出てくる。しかし、それぞれの役者にとにかくインパクトがあるので、誰もが主人公のようで、人物相関図が分かりやすい。ストーリーが単純明快ということもあるが、これはやはり役者陣の質が高いからだろう。他とまったく毛色が違う新しいタイプのヤクザである石原を演じた加瀬亮の冷徹ぶりが新鮮で、作品のアクセントになっている。

   北野映画のテーマは「暴力」にある。今作は文学的要素を捨て、エンターテイメントという要素を追求し、「笑い」もふんだんに盛り込まれている。目を覆いたくなるようなエグいシーンですら、笑えるように作られており、たとえばサム・ライミ監督の『死霊のはらわた』シリーズに見られるB級ホラー映画のような空気感に作品は包まれている。「暴力」と「笑い」がマシンガンのごとく交互に炸裂していく作品のテンポの良さは圧巻である。

   『ソナチネ』や『キッズリターン』のような初期作品のような「衝撃」はないが、観客を意識して、奥深さを捨てる代わりに誰もが楽しめる作品になっている。漫才にしても映画にしても客がいて成り立つ。

   宣伝では「原点回帰」という言葉をよく耳にしたが、これは映画の世界ということではなく、表現者としての「原点回帰」なのかもしれない。

おススメ度☆☆☆☆

川端龍介

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