12年連続3万人超…自殺の実態浮かび上がらせた2つの調査

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   12年連続で毎年3万人を超える人が自らの命を断っている異常な事態。これまで語られなかった自殺の実態を浮かび上がらせる2つの調査を番組が取り上げた。

   1つは、これまで公にされたことがなかった警察の自殺データ。もう1つは、NPO法人自殺対策支援センターライフリンクが自殺者の遺族に丹念に聞き取り調査して、自殺にいたるまでの経過を分析したデータ。

   これらのデータをもとに、リスクの高い人を探し出し、助かる命を救済する対処療法的な活動も自治体で始まった。ただ、切り札になるかというと……

初めて公開された警察データ

   警察が保管する自殺に関する資料を詳細に分析したデータは、今年3月末に公表された。

   自殺を職業別、年代別、家族状況、地域差、さらに自殺が多い曜日、日付などを分析したデータだ。それによると、04年~08年の5年間の曜日別平均自殺者数は月曜日が最も多く92.8人、最も少ない土曜日の70.7人に比べ22人も差があった。

   1日当たりの平均自殺者数は82.1人だったが、日付別では多い順に3月1日138人、4月1日121人、6月1日119人、5月31日116人、11月1日と9月1日114人、3月31日110人と、月末の31日と翌1日に集中していることが分かった。

   地域差を08年の東京23区で見ると、「主婦」の自殺者は多い順に練馬22人、江戸川14人、足立・江東・葛飾各13人。「失業者」では足立19人、葛飾9人、江東・江戸川各8人。「20代女性」では新宿17人、練馬11人、杉並10人、豊島8人となっている。

   月曜日と月末月初に集中していることについて、働く人のメンタルヘルスに詳しい田中克俊医師は、「自殺する方のなかには真面目で律儀な方も多くて、ひと区切りつけるまでと頑張って、弱ったというところで亡くなられる」と分析している。

遺族からも詳しい聞き取り

   警察がこれらの詳細な分析データを公開した背景には、自殺対策支援センターライフリンクの後押しがあった。これまで自殺は個人の問題と見られて、遺族も詳しく語るのを避ける傾向があった。

   しかし、最近の異常な状況は個人的問題で済ませられない、社会的要因が背景に潜んでいると考えられるからだ。

   自殺の背景を探るため、ライフリンクは3年前から自殺者の遺族を訪れ、聞き取り調査に取り組んできた。その数は500件にのぼり、精神科医や労働問題に詳しい弁護士も交えて分析してきた。

   その結果分かったのは、自殺する人は平均4つ以上の問題を抱え、それらが連鎖して自殺に追い込まれている実態だった。

東京・足立区は自殺対策保健師

   分析データをもとに自殺リスクの高い人たちに積極的にアプローチして、救済しようという活動が自治体で始まっている。東京・足立区。08年の自殺者が都内で最も多く、とくに30代の無職男性の自殺は前年の3倍に達した。

   そこで、今年4月から全国でも珍しい自殺対策を専門に行う保健師を任命、7月からはこの保健師が中心になって区民向けの健康診断で心の状態をチェックする作業も始まっている。

「自殺に追い込まれる人たちには、複合的、社会的要因が一人ひとりにある。さらに社会的要因にアプローチしないといけないのではないですか?」

   キャスターの国谷裕子が秋田で自殺対策に取り組んでいる本橋豊・秋田大教授に聞いた。

「地域で自殺対策を進めることにより、(ある程度は)自殺者数を減少させることはできます。ただ、ウツになる前の段階の社会的要因に対してきちんと対応を取らないと、ウツになる方の割合は変わらないことも調査で分かっています。社会的要因一つひとつに対応していくことが今の日本で大切と思いますね」

   年間3万人を超える自殺者が続いている社会・経済を変えていかないと、自殺者減少はむずかしいということである。

*NHKクローズアップ現代(2010年7月14日放送「動きはじめた自殺対策~実態調査が命を救う~」)

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