2024年 4月 23日 (火)

なぜか日系企業にだけ続発する中国「組織なきスト」

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   中国の日系企業がストライキに見舞われたとの報道に接することが少なくない。「ホンダの生産ラインとまる」「トヨタの部品工場でスト」等々。なぜ日系の工場でストが続発するのか。その原因を探ろうとするのが今夜(7月22日)の「クローズアップ現代」だ。

権利意識高い新農民工

<キーワード>は「新農民工」。1980年代以降に生まれた、内陸農村部からの出稼ぎ労働者のことだ。自動車部品工場でストに参加、30%以上の賃上げを勝ち取り、月収3万円ほどになった21歳の従業員はこう言う。

「両親の世代は家族を養うために働いた。新農民工は自分がよい暮らしをしたいから働く」

   高校や専門学校を出た彼らは教育水準が高く、権利意識が強いといわれる。携帯やパソコンを駆使して情報を共有し、企業側に要求を突きつけるのだ。

   番組はさらにストの根本原因に迫るべく、鉄筋工場で単純労働の日々を送る20歳の若者を登場させる。将来に展望を持てず不安を抱く彼は、「今の僕には、何もない。学歴もない。技術もない。お金もない」と嘆く。そして「中国社会の抱える矛盾がストになって噴き出している」と語る。

   NHKの現地記者はストの背景には「広がる一方の格差に対する怒りがある」として次のように話す。

「中国経済は発展し、企業や国は潤っているのに、その恩恵に浴していないという不満と苛立ちがある」

   記者の説明は続く。彼らのストは「組織なきストライキ」だというのだ。中国にも共産党の指導する労働組合に似た組織はあるが、経営側に立っており、労働者はアテにしない。ある日、突然、一部の従業員が職場放棄し、メールで情報を交換し合い、参加者がサミダレ式に増えてストが広がるという。企業側にとっては厄介である。

交渉に応じると「会社は弱腰」とエスカレート

   中国の現地法人社長を長く務めたというスタジオゲストの田中弘司(パナソニック名誉顧問)も、「誰がリーダーか分からないことが事態を難しくしている。すべてが事後の対応になる」と述べる。

   企業側も手を拱いているわけではない。派遣労働者に正社員になる道を開いたり、要求を事前に把握するべく、中国人幹部から意見を聞いたり、工場内に悩み事相談室を置いたり、寮にカラオケルームを設けるなど、さまざまな努力を重ねてはいる。が、決め手にはなっていないようだ。

   番組のVTRの中で「スト対策セミナー」の出席者が、「外資系企業にストが多い。中国企業とどこが違うのか」と質問すると、講師の中国人弁護士は「日系企業は交渉に応ずる。従業員にすれば、その会社は弱腰だ、スキがあると見てエスカレートする」と答えた。この場面は記憶に残る。

   現地記者によると、今のところ中国政府はストを静観しているそうだ。労働者の賃金が上昇して消費が活発になるのは歓迎すべきことだからという。パナソニック名誉顧問は「中国におけるビジネスチャンスが拡大するのに合わせてリスクも拡大する」と結んだ。

   「新農民工」は8000万人を超すらしい。日系企業の命運を握るといえるかもしれない。

   目を日本に転ずると、ここしばらく若い労働者たちが正当な要求すら出せていないように思えて寂しい。こちらの政府には早く方策を講じてほしいものだ。

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