先端ビジネスに応用される日本伝統の工芸技術

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   京都工芸繊維大学の「伝統みらい教育研究センター」で進められているプロジェクトは、京都ならではのものであろう。西陣織や友禅染、清水焼など、伝統工芸の「匠の技」を科学的に分析し、後継者育成と先端技術への応用に役立てようとする取り組みだ。

   たとえば、京ちょうちんをつくる9代目の父親と10代目の息子。ちょうちんの仕上がりには明らかに差がある。父親の仕事はスピード感があり、紙の張り具合も滑らかだ。技術的にどこが違うのか。研究グループは、赤外線に反応する28個のマーカーと、目の動きを記録するゴーグルを親子に装着させ、6台の赤外線カメラを向ける。

   結果は――。刷毛で糊を塗る際、父親は手首を細かく使って満遍なく塗っている。一方、息子は手首を動かさず押し付ける感じで塗りムラがあった。紙を張る作業を確認する時間も、父親はほとんどに0.2秒以上かけていたが、息子が0.2秒以上見つめたのは2回だけだった。

   「ためになった。成長してからも見てほしい」と息子は述べる。

   国谷裕子キャスターから伝統文化全体に詳しいと紹介を受けたゲストの吉岡幸雄(染色家)は、「記録に残してもらうと後々の人に参考になる。コツを画面で見るのは勉強の方法としていい」と言った。

組み紐からゴルフクラブ、清水焼で携帯電話部品

   応用編は組み紐の技術。組み紐は木綿や絹の糸を三つ折り状に組み合わせる。1本の糸よりはるかに強度に勝る。この技術をゴルフクラブのシャフトで実用化しようとしているのだ。プロジェクトチームは炭素繊維を組み紐状に束ね、プラスチックの樹脂を加えて加熱し、金属に負けない堅い素材を開発する。

   「組み紐」の角度によって堅さに差がつくこともわかる。通常のシャフトはカーボン繊維を何層も巻いてつくるため、堅さの境界ができる。この素材を使えば境界もなくせる。使い心地も悪くないらしく、この秋の発売を目指しているという。お値段はどうなるのだろう。

   チームの関係者は「伝統工芸を守るのではなく、攻めて守る。新しい製品を開発して守る」と胸を張る。清水焼の技法を携帯電話の部品に生かし、世界一のシェアを誇るメーカーも紹介される。確かにビジネスチャンスはありそうだ。が、先ずは「匠の技」の継承者を育て、伝統工芸を継続しなければならない。番組によれば、伝統工芸品の需要は激減し、職人もどんどん減っているようだ。危機的状況らしい。

   吉岡は「日本も産業革命を経たが、ほかの先進国と違って伝統工芸の流れが細くなっても継続している。それで先端技術の中でも応用できた。古きを訪ねることにアイデアの源泉がある」とし、「多くの方々が見る目を広げて伝統の技術に関心を持っていただきたい。伝統的なものを使っていただくことで応用も自からされて行く」と語った。

   国谷がめずらしくスタジオを出て西陣に出張。インタビューがVTR編集のせいか、いつもの生放送に比べて余裕が感じられた。着物地のワンピース姿の国谷も生き生きしていた。

アレマ

*NHKクローズアップ現代(2010年7月29日放送「匠の技にチャンスあり」)

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