検閲くぐり抜け妻や恋人に送られた兵士たちのラブレター

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   題して「戦場からのラブレター」。そう聞けば、映画や小説のタイトルのようでありつつ、少々やすっぽく、面映ゆく思えるかもしれない。もっとも、これはNHKのテレビ番組クローズアップ現代の題なので、ご心配なく。

   番組によれば、日中戦争、太平洋戦争中に兵士が戦地から妻や恋人に送った熱烈なラブレターが、最近続々と公開されているそうだ。受け取った女性が高齢になってきて、「お棺にいれてもらうか、それとも後の者に見せるのがいいか」と考えた結果である。番組中、「僕は○○ちゃんが好きなのです」「無性にお前が恋しくて仕方がない」などといった文面が多数紹介された。

「無性にお前が恋しい」

   戦争中の通信といえば、検閲が思い浮かぶ。「ラブレター」を書き送るなど、当時の大日本帝国軍兵士の模範的行動とは思えないが、これらの手紙は軍事郵便で送られていた。ピーク時には年間4億通も流通したために、検閲の目が行き届かなかったことが背景にある。

   「個人の手紙だが、第一線の兵士が戦場でどんな思いをしたか、体験をしたかを読み取れる貴重な資料でもある」と、研究者である専大教授は言う。こうした手紙のなかには、捕虜虐待など戦争犯罪を伝える記述も見当たるそうだ。

   ラブレターは戦争の悲惨さを伝えるものでもある――と番組は言うのだが、そのわりには戦場からの手紙の「愛のメッセージ」の側面がやたらと強調されてたように思えた。小説や映画ならともかくも、クロ現らしくなく、戦争というものが、2人の愛の世界のなかで収斂していたようですらあった。

   ある兵士が戦争への疑問を感じたエピソードとして紹介されたのは、こんな美談である。上官から敵兵中国人の妻子を殺害するように命じられた。自分にも幼い子供がいたこの兵士は、体を張って上司に逆らい、母子を放免させた――。

   この兵士は、その手紙でなに何を伝えようと試みたのだろうか。戦争の実態なのか。そもそも、国で心配しながら待っている女性に、検閲の可能性を頭に入れつつ、「愛」以外の赤裸々な告白を書き送るというのも、なかなか難しいことではあるだろう。

ボンド柳生

NHKクローズアップ現代(2010年8月3日放送「戦場からのラブレター」)

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