【取材秘話】「大会歌」作詞者の名前に隠されたロマンス

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取材秘話・フラッシュバック(10)


    高校野球ファンなら大会歌の「栄冠は君に輝く」はよくご存知だろう。甲子園球場では5回の攻防を終わると軽快なメロディーが場内に流れる。勇壮で、若者を勇気づける曲は耳について離れないほどだ。若人たちのこの青春賛歌には、あるロマンスが隠されている。

    6・3・3・4制への学制改革により、1948年(昭和23年)、名称も全国高等学校野球選手権大会となった。これを記念して大会歌をつくることになり、朝日新聞社が全国から歌詞を募集すると5,252の作品が集まった。入選したのは石川県の加賀道子さんだった。この歌詞に曲をつけたのが古関裕而さんである。古関さんはNHKラジオの連続ドラマ「君の名は」のハモンドオルガンで知られ、幅広いメロディーで人々を楽しませた。早大の応援歌「紺碧の空」や阪神タイガースの「六甲おろし」の作曲でも知られる。

    それから20年経った68年、第50回記念大会を前に、「実は」とある人物が名乗り出た。かの人物は大リーグのエンゼルスで活躍している松井秀喜と同じ石川県根上町(現能美市)出身で、脚本などを書いていた加賀大介さん(本名・中村義雄)だ。話を聞くと「賞金目当てと思われるのが嫌で」婚約者の名前で応募したのだと打ち明けた。入選したのはいいが、引っ込みがつかなくていたらしい。68年までは「作詞・加賀道子 作曲・古関裕而」と表記されている。二人は結婚したが、事実を隠し通した20年間はさぞ重苦しい長い年月だったことだろう。

     「雲はわき 光あふれて……」

    今日も球児たちの賛歌を歌っている。

岡田 忠


岡田 忠(おかだ・ちゅう)プロフィール
スポーツジャーナリスト。1936年広島県生まれ。立命館大学卒。朝日新聞社東京本社編集委員を96年に退職して現職。高校・大学では野球部に所属し投手をつとめる。高校野球のテレビ解説経験も豊富。

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