2020年 11月 28日 (土)

無人島に女1人と男23人...生き延びるための悲しい知恵と欲望

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(C)2010「東京島」フィルムパートナーズ
(C)2010「東京島」フィルムパートナーズ

東京島>旅行中のある夫婦が嵐に遭い無人島に漂着する。その後にフリーターの若い男たち16人が同様に流れ着く。彼らは島を「東京島」と名づけた。

   島にいる女性は夫婦の妻・清子(木村多江)のみ。そんなある日、清子の夫が謎の死を遂げる。残された清子はフリーターの男たちから、女王様のようなあつかいを受ける。ただ1人の女だからというだけでちやほやされる清子を嫌うワタナベ(窪塚洋介)を除いては。そしてさらに密航に失敗した中国人6人が島に流れ着く。こうして23人の男と、たったひとりの女の奇妙な生活が始まった。原作は桐野夏生の同名小説。

性欲のはけ口となり夫も次々代わり...

   女は男たちによって性欲のはけ口となり、身も心も傷ついて、それでも必死で生き延びようと一番強い男の影に隠れひっそりと暮らす。そんな人間の欲望むき出しの暗く重たい物語かと思えば、一転、冒頭から清子のナレーションによりテンポよく進む物語は、実にコミカルな作品に仕上がっていた。

   この作品ではそんな意外性がアクセントになっている。フリーターの男たちがみんな、とにかく清子に優しいのだ。無理やりに清子を襲うことなど絶対にしないし、2番目の夫が謎の死を遂げたあとも、くじ引きで清子の夫を決めるほど、男たちは争いを避けた。

   途中から流れ着いた中国人グループも、清子をめぐってフリーターの男たちと争うのかと思えば、ワタナベと仲良くなり、清子に対しても貴重な豚肉を分けるなど親切にする。清子もこんな状況下でさぞ苦悩しているのかと思えば、「私は絶滅の危機に瀕したトキと同じなんだ」と、次々と夫が代わっても気にせず、いつもポジティブだ。清子のトランクの中身、エルメスの色鮮やかなスカーフ「カレ」は、彼女の島での生活を華やかに彩り、一人の女として彼女を守りぬく大切なアイテムになっている。

   しかし、次第に「ここから脱出したい」と願うようになる清子。フリーターの男たちを裏切り、中国人に付いていこうともする。そんな清子に男たちの不信は募り、男たちは彼女を「女」として見なくなっていく。

   清子に興味を示さなくなった男たち。島からの脱出を考えてはいても実行には移さず、ただ同じことを繰り返している日々。その姿はいまどきの若者「草食系男子」や「ニート」の姿を彷彿とさせるが、ワタナベだけは清子を「こんな年増の娼婦!」と嫌うが、清子と距離をおいていたワタナベが実はこれから起こる事態をもっとも的確に予想していた。

   「脱出派」と「島に残る派」に分裂して壊れていく「東京島」のバランス。清子の体に起こるある異変。意外な展開はスリリングだけれども、結局、「完全な悪女」にも「タフで強い女」にも「優しい母親」にもならず、中途半端な清子という女には少々がっかりさせられた。

   清子は最も大切なものまで捨て、自分一人ででも「東京島」を出て生き抜くのか。彼女の最後の選択に注目していただきたい。

PEKO

おススメ度☆☆

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