母・大竹しのぶの「月ちゃーん」に戸惑う娘・宮崎あおいの哀しさ

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(C)2010「オカンの嫁入り」製作委員会
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<オカンの嫁入り>デビュー作『酒井家のしあわせ』で、複雑な事情を抱える家族の絆を優しく繊細に描き、サンダンス・NHK国際映像作家賞/日本部門を受賞した呉美保監督作品。今作では、より日常に近い形の些細な幸せを丁寧に描ききった。親子役で初共演する宮崎あおい、大竹しのぶにも注目だ。

すれ違い始めた2人だけの家族

   月子(宮崎あおい)は、母親の陽子(大竹しのぶ)と仲良く二人で暮らしている。ある日の深夜、酔った陽子が金髪リーゼントの見知らぬ男、研二(桐谷健太)を連れて帰ってきた。陽子曰く、「おみやげ」らしい。翌朝になってもなかなか帰ろうとしない研二に月子が嫌悪感を抱いていると、ケロッとした顔で陽子は言う。

「私、(研二に)プロポーズされて、お引き受けしました」

   突然の結婚報告に月子は戸惑い、とっさに家を飛び出して隣に住んでいる大家、サク(絵沢萠子)のところへ行ってしまう。陽子には月子が生まれる前に死別した夫・薫がいて、「薫さんが最初で最後の人」が口癖だった。月子はそれだけに母親を許せず、戸惑いは怒りに変わっていく。

   すれ違い始めた家族の仲をどうにか取り持とうと、研二は元料理人の腕を生かして料理を作ったり、月子の愛犬ハチを散歩に連れて行ったりと、不器用ながらも奮闘する。そんな姿に少しずつ月子は心を開いていくのだが、あるとき陽子の抱えていた秘密が明らかになり……。

   陽子の「月ちゃーん」というセリフが頭から離れない。映画の冒頭、酔った陽子が家の前で月子を呼ぶときの甘えるような「月ちゃーん」は、これまでも陽子の突飛な言動や行動に月子が振り回されてきたのだろうと想像させる。この家族の関係をこのひと言が表しているといってもいい。

料理シーン、食卓シーンで描く人間関係

   大竹しのぶを母親役に抜擢した理由も、娘と友だちのような関係ということなら、大きくうなずける。陽子の「月ちゃーん」はこの他にも要所要所で出てくるのだが、助けを呼ぶような陽子のそんな呼びかけの中に、月子の居場所も見えてくるような安心感すらある。

   月子と陽子の親子を支える周りの人々との温かい交流が見えてくる料理シーンや食卓シーンもこの映画の見どころの一つだ。とくに台所という場所を上手く使っている。陽子と研二、月子と研二、そして月子と陽子、それぞれの組み合せで料理を作ることになるのだが、料理という共同作業で互いが繋がりを強めていく様子はたしかに納得できる。

   映画の締めくくり方なども含め、全体に共感の持てる作品だったが、月子が抱える過去のトラウマシークエンスに、そこだけ違う映画のような違和感を覚えた。親子の物語に絞っていたのに、回想に陽子が出てくることはなく、そのとき何をしていたのか分からない。娘のピンチのときも、研二とよろしくやっていたのか。余計な詮索をしてしまった。

野崎芳史

おススメ度☆☆☆

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