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特産品ハンターが探す「日本にはまだまだうまいもんが隠れてる」

   「鳥取砂丘・らっきょう漬け」2100円、「瀬戸内白桃」(岡山)1個1300円……ちょっと割高だが、地方特産の果物や野菜、海産物がいま消費者に人気だという。

    キャスターの森本健成がスタジオに並んだそれらを見せた。いやぁ、あるある。北海道から沖縄まで、どれも見かけが悪い、日持ちがしないなどの理由で、かつては地元でだけ売られていたものばかりだ。それがにわかに人気になっているのはなぜか。

   仕掛人がいた。「特産品ハンター」と呼ばれる人たちだ。フリーもいれば、大手スーパーの食品担当もいる。安ければ売れるが最近の流れだが、 発想の転換とアイデアで、消費者のちょっとした贅沢心と生産者の意欲を結びつけた結果だという。

明治時代の洋梨、大玉桃、地栗、

   岡山のハンター阿部憲三さんは4年前、珍しい洋梨「ドワイヤンヌ・デュ・コミス」を自家用に作っている農家を見つけた。明治のころに入った種類だが、いまはほとんど作る人がいない。洋菓子のような香りと甘さ。1個2000円で売ったら売り切れ。それが毎年続いている。

   選果場では規格外にされてしまう大玉の桃を、別に箱に入れて売ったら5個で6800円というのに完売。巨大ブドウは1房1万円で売れた。桃の収穫の時期を早めて、酸味を多くしたら、これも受けた。消費者の嗜好はいま酸味だと見たからで、農家からは出ない発想だ。

   スーパーの食品部長、服部吉宏さんは、四万十の地栗に目をつけた。大きくて濃厚な味だが、近年中国産に押されて低迷。ペーストにして菓子屋に出していたのを、チーズケーキ風に作って、値段も同種のものより高めに設定した。チーズに負けない濃厚な栗の味が好評で、いま加工場はフル稼働している。

   その加工場はハンターの役割は大きいという。

「東京など消費地の声はわれわれにまではとどきませんから」

   生産者のこだわりと消費者のニーズを結びつけることで、新たな食材の発掘になるのだ。「もっといいもの、もっと旨いものがあるんじゃないか」という貪欲さの成果だ。

節約疲れで「ちょっと贅沢な野菜や果実」

   日本総研の三輪泰史主任研究員はこう分析する。

「消費者の節約疲れ。ちょっとした贅沢だが、これまで肉以外には、贅沢の対象になるものがなかった。それがいま野菜にまで広がった。ハンターは見つけるだけでなく、ブラッシュアップする」

   会津若松のハンター、本多勝之助さんは、経産省が地域の特産品を売るために募集した「地域プロデューサー」だ。ブランド米や希少リンゴのジュースで実績をあげている。

   福島産の豚肉を県外で売りたいという業者の相談に乗った。沖縄の「プロデューサー」と連携して酢豚を作った。沖縄のパイナップルは薄めた海水を使った独特の栽培で、甘さと塩味が混ざり合った「塩パイン」と呼ぶ。これを醤油を使わず、塩と酢で味付けした。レストラン・ チェーンの客に試食してもらったところ好評で、近くメニューに乗る。

   三輪さんはこれを「地産地消プラスアルファだ」という。「他の地域のものを入れて新たな価値を作り出す。特産品ハンターは消費者目線を持った農家の味方なんです」

   「B級グルメ」や「秘密のケンミンSHOW」などを見ても、日本の食は奥が深く、地域の味は多彩だ。逆に、都会では「ファーストフード」や「コンビニ」で味の画一化が進む。ハンターたちはこれに風穴をあけることになるのだろうか。ちょっと期待したくなる話だった。

ヤンヤン

*NHKクローズアップ現代(2010年9月27日放送「『うまいもん』を探せ!特産品ハンター」)