横行する「ネームロンダリング」―養子縁組で名前変え詐欺、借金逃れ

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   「借金を帳消しにしたい」「過去の過ちを消して人生をリセットしたい」

   一面識もない他人と養子縁組をして名前を変え、別人に成り済ます「ネームロンダリング」が横行している。不自然な養子縁組と分かっていても、受理せざるを得ない自治体では国に制度の目直しの求め、警察も犯罪の温床になっていると警戒を強める。

   そんな懸念をよそに、大阪では養子縁組で繰り返し名前を変えた主婦が主犯格となって、交通事故を装う保険金詐欺グループが摘発された。振り込め詐欺など悪質な犯罪の手段にも使われているネームロンダリング、「クローズアップ現代」がその背景と実態を追った。

6年間に4回変えて数千万円詐取

   養子縁組制度は法律上の嫡出子の身分を取得したり、家を相続するために行われるのがこれまで通例だった。名前を変え、犯罪に悪用するため顔を合わせたこともない他人と養子縁組を結ぶなどまずなかった。そのネームロンダリングが全国に広がり後を絶たない。

   現在、自治体への養子縁組届は年間およそ8万件のがある。形だけの養子縁組は「公正証書原本不実記載」に問われ、軽くて罰金刑、悪質なら懲役刑が待っているのだが、摘発は難しい。そのため、「親子」の年齢差がないケースや1か月に何人もの他人と養子縁組を繰り返す不自然な養子縁組が確実に増えている。東京都内のある区では、不自然な養子縁組届が全体の16%にも達しているという。

   キャスターの国谷裕子は「名前は自分のアイデンティティーそのもの。家族との繋がり、社会との繋がりもあって本来なら抵抗感があってもおかしくないのですが」とタメ息をつく。

   背景には、いっこうに出口が見えない不況、失業、借金地獄がある。ある貸金業者は「借金自体は消えずに残るが、養子縁組で名前を変えられると取り立てに行く手段が途絶え、どこへ取り立てに行っていいか分からなくなる」という。

   借金逃れはいわば『入門編』。味をしめて保険金詐欺や振り込め詐欺の片棒を担ぐケースも出ている。その一つが大阪の保険金詐欺事件。最初は借金逃れのために思いついた養子縁組だが、仲間を募って男女8人が養子縁組を繰り返し、仲間同士で交通事故を装い保険金を詐取した。

   主犯格の35歳の主婦は、6年間に養子縁組で4回も名前を変えて数千万円をだまし取っていたとみられている。

ネットで『客』集める「仲介ブローカー」

   最近では、インターネットサイトに「養子縁組受け入れます」「戸籍上の親を探してます」などといった書き込みも増えている。また、ネットで名前を変えたい人物や戸籍上の親を受け入れる人物を物色して仲介料を取る「養子縁組ブローカー」も出没している。

   NHK社会部記者の清水將裕が100件近い養子縁組をあっせんしたと豪語するブローカーを取材した。このブローカーは、ネットを通じてサラリーマンや普通の主婦、フリーターなどを対象に養子縁組を探し、「稼げるから」と言って振り込め詐欺に誘うと「たいがいは『いいですよ』と乗ってくる」という。

   清水記者は「深刻なのはブローカーの仲介で名前を変えた人物が、自らブローカーになるケースも出てきたこと」(清水)だと言う。

   事態を重視した自治体では、養子縁組の審査を家庭裁判所で厳しくするよう法務省に要望している。これを受けて法務省も実態調査に乗り出した。

   ヨーロッパでは、日本の戸籍にかわる身分登録制度で出産から結婚、離婚、養子縁組、死亡までを裁判所が厳しく管理している国もある。

   これに比べて、日本の戸籍制度や養子縁組制度は管理がゆるい。大化の改新までさかのぼる戸籍制度は、明治になって「家」籍から「戸」籍へと改められたが、現行制度は時代に沿わなくなっている。それは戸籍上は200歳の老人が生きていることになっていたことでもハッキリしている。抜本的な見直しは急務だ。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2010年9月29日放送「『ネ―ムロンダリング』広がる闇」)

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