ノーベル賞教授を支えた恩師の座右の銘とアドバイス

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   ノーベル化学賞を受賞した鈴木章・北海道大名誉教(80)と根岸英一・米パデュー大特別教授(75)。2人にとっては長い道のりだった。ともに経済的に恵まれない環境の中で高い志を持ち続け、クロスカップリングという新たな技術を発展させて栄光をつかんだ。

   スタジオには鈴木教授、米国滞在の根岸教授とは中継を繋ぎ、キャスターの国谷裕子が2人が持ち続けた心の支えとは何だったのかを探った。

TALL OAKs Grow LITTLE ACORNs

   この日の昼、鈴木教授は首相官邸に招かれ、米国滞在中の根岸教授は2人にとっての恩師の墓前を訪れて受賞の報告をした。恩師とは2004年に亡くなったパデュー大のハーバート・ブラウン博士。鈴木教授が書店で偶然手にしたのが、ブラウン博士の「有機化合物の合成に関する最新の研究」という本。「専門書を徹夜で読む人はないのですが、わくわくしながら徹夜で読み通した」と述懐する。

   研究テーマを模索中の鈴木教授は強い衝撃を受け、「研究室で学びたい」と博士に手紙を書いて翌年に渡米する。32歳のときだった。

   東大を卒業して大手企業に就職した根岸教授も、研究に限界を感じていた時に博士の言葉に出合い、感銘を受けて渡米する。26歳の時だった。

   鈴木教授が「博士の本に再三出てきた」と言い、根岸教授も「研究の原点を感じ、アメリカ移住の決意をした」というブラウン博士の言葉がある。

「TALL OAKs Grow LITTLE ACORNs」(大きな樫の木も小さなドングリから)

   この言葉は博士の座右の銘として、愛用していた置時計の台座に刻まれ、今でも大学に飾られている。

   国谷が「研究のなかで一番大事にしてきた姿勢は何だったのですか」と聞く。

   鈴木教授は次のように語った。

「それはブラウン先生がいわれた『教科書に載るような仕事をしろ』ですね。以来、私が学生に言ってきたのも『重箱の隅っこをほじくるような研究はするな』 新しい研究をするようにということで、2つとも同じことなんです」

   根岸教授も「ブラウン先生からいろいろなことを学びましたが、次の3点を申し上げたい」と話す。

「ブラウン先生流に言えば、新しい大陸をディスカバ―すること。これが大きなポイントで、次は『システマティック・エクスプロレーション』(系統立った探究)で、妥協のない形で論理的な探究をしていくこと。
   3つ目は、探究を続けるにあたっては、先生流にいえば、『エターナル・オプティミズム』(永遠の楽観主義)。つまり不屈と言いますか、100%楽観主義をもって追究する。この3つが私の頭に常にありますね。まず、自分が競争を通じてできるかできないか見極める。そのあとは世界が舞台。
   野球でいえば、まさに松井秀樹さん、イチローさん、ゴルフなら青木さん、石川遼さん、宮里藍さん、世界で勝負している」

   民主党の蓮舫議員が昨年、事業仕分けの際、著名な科学者を前に「1番でなければいけませんか」と刺すような質問をした。こうした輩にどう説明したらよいか科学者たちが答えに窮した姿が思い起こされる。その蓮舫議員はいまや行政刷新担当大臣。

次のノーベル賞研究は炭酸ガス

   最後に国谷が「若者たちに理科離れが進んでいます。どんなメッセージを贈りたいですか」と質問すると、2人の答えは明快だった。

   鈴木教授「資源のない国で、将来のために新しいものとか方法を工夫して作り、世界に認めてもらう。それが面白い領域だということを若い人に知ってもらう。年配の者がその努力をする必要がある」

   根岸教授「これは絶対だと思うのはエネルギー問題。いま、炭酸ガスは悪玉扱いにされていますが、それを引っ繰り返して炭酸ガスこそ有機化合物の元だと。これを解決したらノーベル賞もの」

モンブラン

※NHKクローズアップ現代(2010年10月13日放送「日本人よ 大志を抱け~ノーベル賞・2人に聞く~」)

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