「介護殺人・介護自殺」家族の4人に1人が抑うつ

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   2009年3月、岩手・花巻市で事件が起こる。62才の男性が93才の父親を殴り殺したのである。認知症の父親を介護するため、男性は仕事も辞めていた。40年以上も父親と2人で暮らし、献身的に介護する、近所でも評判の孝行息子だった。オムツを嫌がる父親の下着を洗う日々がつづく。週1度、父親がデイサービスに通う日だけが男性の解放されるときだった。心配したケアマネージャーがデイサービスを増やすことを勧めるが、収入は父親の年金だけで余裕がなかった。追いつめられていたのである。

   NHKの取材に対し、服役中の男性は手紙で答える。

   ――同居する者が世話するのが当たり前だと思っていた。親族、友人など相談できる人は多いがなかなか言い出せず、自分に大丈夫だと言い聞かせていた。精神状態が最悪の方に向いているとは考えも及ばなかった。

   遠方の姉にグチをこぼしたのは事件当日だったという。

「オレ疲れた。殺されそうだ」

   その数時間後、男性は父親を手にかける。身につまされる話である。

介護者にも手厚いイギリス

   ゲストの湯原悦子(日本福祉大学准教授)によると、ここ10年、男性介護者が増えており、「介護殺人」加害者の7割は男性だそうだ。

「介護に目標を立てて仕事モードでやってしまう。認知症は現状維持が精一杯なのに、結果を出そうと頑張っているうちに辛くなってしまう」(湯原)

   事件に衝撃を受けた花巻市は、自宅に要介護者のいる家族の実態調査を行う。そして厳しい現実を知らされる。2800世帯で介護を担う家族の4人に1人が抑うつ傾向にあったのだ。「行政として反省しなければならない」(長寿福祉課長)と受け止めた花巻市は、全国に先駆けて今年4月から介護相談員を配置、対象世帯を回らせて介護者支援に乗り出した。

   番組後半は、介護者支援の先進国、イギリスの取組みが紹介される。一言でいえば、介護者がストレスをため込まないように、社会から孤立しないように、直接支援する仕組みが整えられている印象だ。

   基本となるのは、15年前に制定された「介護者法」。自治体の担当者が聞き取り調査をし、介護者が「余暇」「仕事」「経済的支援」が必要と認められれると、「休息サービス」「就労支援」「月3万円ほどの介護者手当」が提供される。さすが「ゆりかごから墓場まで」の国だけのことはある。

   湯原によれば、日本でも1990年代初頭は、「要介護者」だけでなく「介護者」にも目を向ける発想があったらしい。介護保険ができて10年、「要介護者」には手が差し伸べられたが、「介護者」を支える視点は抜け落ちたようだ。

   「イギリス並みの法制度を求めたい」と湯原は述べる。「介護殺人・自殺」「介護うつ」「介護離職」を少なくするために、国は先ず花巻市に学ぶべきだろう。

   ゲストが場慣れしてないせいか、キャスターの国谷裕子が質問を繰り返したり、言葉を継ぐ場面が目についた。ゲスト選びはむずかしい。

アレマ

NHKクローズアップ現代(2010年10月14日放送「介護を担う家族を救え」)
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