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なぜ起きる?クルマのペダル踏み間違い事故

   昨年から今年のはじめにかけてトヨタ車の急加速問題が、とくに米国で取り沙汰された。しかし、米運輸省が8月にまとめた中間報告では、急加速症状を訴えた58人中35人にヒューマンエラーが疑われ、アクセルとブレーキの「踏み間違い」が示唆されているという。

   AT車のブレーキとアクセルの踏み間違い事故は国内でも増加傾向で、年間約7000件発生。この問題が「見過ごされてきた」のではないかと「クローズアップ現代」は訴える。

   立体駐車場から落っこちたり、コンビニに突っ込んだり――といったニュースはたまに見るので、まったく見過ごされたわけでもなかろうが、こうした事故の原因は、ドライバーの単なる不注意に還元されがちだ。お歳だったのねとか、踏み間違えたら普通すぐに気づくのではなかろうか、私は大丈夫だな――などと考えてしまいそうだが、そうじゃあないというのだ。

年齢や運転経験に関係なく発生

   交通心理学が専門だという九州産業大学の松永勝也教授の協力のもとに番組が実験を行ったところ、踏み間違いについての常識の非常識がわかったんだそうな。運転中にちょっと注意をそらすような出来事――たとえば、ケータイが鳴るとか――のときに、脳の注意力が低下する。そのときブレーキを踏もうとすると、被験者は普段から操作回数の多いアクセルペダルのほうを誤って踏む確率が増えた。

   また、車庫入れなどのバック運転時にも踏み間違いは多く起きている。これもシミュレータを使って実験してみると、被験者は後方を見ようとして体をねじった状態のときに、アクセルとブレーキの正しい位置を把握できなくなる傾向があり、なかにはブレーキを踏んだつもりで、アクセルばかり踏んでる人もいたという。

   踏み間違えたら、おかしいと思わないのか? てっきりブレーキを踏んでるつもりなので、「ブレーキが効かない」とパニック状態になり、さらにアクセルを踏み込んでしまうことがママあるという。

   松永教授は、同じような踏むという動作をするペダルがふたつ並んでるという「構造自体に大きな問題がある」し、踏み間違いは年齢や運転経験などに関わらず、幅広い人間に起こりうると警鐘を鳴らした。

ボンド柳生

* NHKクローズアップ現代(2010年10月19日放送「見過ごされてきた踏み間違い事故」)