監視カメラ野放し…犯罪防止かプライバシー保護か

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   「エッ!」と思う光景だった。女性がフェンスの上にいたネコをゴミ箱に放り込んで立ち去った。これがネコの飼い主の防犯カメラに写っていた。先月、イギリスでの話だ。

   怒った飼い主は、映像をネットの動画サイトに投稿。女性はたちまち特定されて、誹謗、中傷と過熱報道の果てに銀行員の職を失った。当時女性は、父親が危篤状態で、精神的に不安定だったことがわかった。これで疑問の声があがった。

「彼女のしたことは誉められないが、人生を台無しにするほどのことか」

   矛先は防犯カメラそのものにまで及ぶ。

   イギリスは全土で420万台という防犯カメラ王国だ。目的は犯罪防止、とりわけテロ対策にある。しかし、撮られる側の人権はどうなっているのか。

住民同士のトラブル増加

   防犯カメラは日本でも急速に普及していて330万台といわれる。NHKのスタッフが東京・渋谷駅からNHKまでの800メートルの間を数えたら、見つけただけで243台。うち31台は警察と自治体が設置したものだった。繁華街ではほぼ10メートルに1台あった。

   いまや駅のホームからコンビニ、タクシー車内、住宅地にまで及ぶ。防犯カメラは2000億円市場といわれ、5年前には一式数十万円したものが、いまや1万円を切るカメラもある。

   これによってたしかに防犯の実はあがっているが、一方で本来の使い方とは違うプライバシーの侵害やネットマニアの道具にもなっている。しかし、カメラの設置や使い方を規定する法律はないから止めようがない。

   東京・成城警察署は業者と連携して、月1万円でカメラを貸し出している。5年間で約900台、29件の犯人検挙につながった。自宅に4台設置するという現場では、成城署員が「道路まで写るように」と要望していた。すると、 近所の男性が「やめてくれ」と言ってきた。

「圧迫感がある。道を歩いていて監視される」
「これは自分のためにつけているので、犯罪の抑止になる」

   設置する男性との押し問答。警察は「賛成も反対もあるが、犯罪は減っている」

   西原博史・早大教授は「どちらのいい分も正しいところがあって、どう折り合いをつけるかわからないのが現状」という。

ドイツでは専門家が設置判断

   規制が最も進んでいるのはドイツだ。1998年の連邦データ保護法の改正で、民間人が公共空間を撮ることは禁止、商店でも敷地から1メートル以内という規制がある。違反には最高30万ユーロ(約3400万円)の罰金だ。設置の是非の判断について、独立のデータ保護観察官がいて、関係者の話し合いを調整する。「かつてナチスに国民が監視された苦い経験からできた」と監察官はいう。

   イギリスでも法案審議が始まった。クレッグ副首相は「現政権は国民をスパイする文化に終わりを告げる」と宣言した。主としてアラブ系市民へのテロ対策の行き過ぎがあったとして、420万台の見直しもするという。

   西原教授は「監視は不信感から出ている。いまはどうしても付けたい人の側からの論理で始まるが、安心を手に入れるには信頼関係が必要。どういう場所ならいいのか、どういう権利を守るのかという大原則を確認して明文化しないといけない」という。

   何か事件が起こるたびに、意外なところから映像が出てくる。高速道路を走ってもわかってしまう。みな監視・防犯カメラだ。どこかでだれかが見ているという不気味。ケータイでも動画が撮れてしまうというのに、ルールは追いつくのだろうか。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2010年10月25日放送「増殖する監視カメラ」)
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