蒼井優「天狗の娘」…泥まみれ顔くしゃくしゃの魅力

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(C)2010「雷桜」製作委員会
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   <雷桜>宇江佐真理の同名小説を『ヴァイブレーター』『やさしい生活』の廣木隆一監督が映画化である。徳川将軍家に生まれ、心の病を抱える侍と人里離れた山奥で育った野性的な娘との身分違いの恋を描いた作品。主演の岡田将生と蒼井優は共に時代劇初挑戦で、他にも柄本明、小出恵介、時任三郎など豪華俳優陣が集結した。

愛の物語としては物足りなさ

   徳川将軍・家斉の十七男の清水斉道(岡田将生)は、母の愛を知らず心の病を抱えていた。家臣である瀬田助次郎(小出恵介)はそんな斉道に故郷の瀬田村の話をする。瀬田山には天狗がいる、と。

   斉道はその話が気になり、静養先に瀬田村を選んだ。瀬田村に向う道中、斉道は鷹を追って瀬田山に入り込み、村人から天狗として恐れられている雷(蒼井優)と出会う。それは、美しくも奇妙な巨木『雷桜』の下だった。

   次第に惹かれあっていく雷と斉道だが、身分の違いというどうしようもない現実が2人の前に立ちはだかる。

   全体的に蒼井優の演技が光った。天狗に育てられた野性的な娘という難しい役柄に果敢に挑んでいる。泥まみれで叫び、顔をくしゃくしゃにして笑う。かと思うと、ふと見せる女性的な可憐な表情に息を呑む。彼女の魅力は身分違いの恋に踏み出してしまう斉道の行動に、一種のリアリティを与えている。

   序盤にこの作品ならではのラブシーンがある。雷が指笛を鳴らして馬を呼んでいるのを見て、斉道が真似しようとするが、できない。すると雷はためらいもなく斉道の口に自分の指を入れてやる。2人の身分の差を観客に強く印象付けながらも、それでも好き合っていく2人の行く末を暗示する良いシーンだった。

   ただ、この映画を禁断の愛の物語として見るには物足りない。彼らはいつまで経っても行動をしないからだ。『近松物語』のように逃避行をしろとは言わないが、身分の差を埋めようとする2人の行動がもっと見たかった。雷と斉道の周囲で起こるドタバタ描写も印象が強すぎて、2人の物語が薄れてしまっていた。芝居はすばらしかっただけに残念だ。

                                        

野崎芳史

   おススメ度☆☆

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