なぜ作家先生は銀座に通うのか…『恋愛』書くためらしい

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   いつもより、なぜか会議室が柔らかい雰囲気に包まれている。いつもは眉間に皺を寄せているプロデューサーも、今日は皺も伸びてどこか穏やか。この平和的な雰囲気を訝しく思いながらも、下りてきてしまうのは瞼。降り注ぐ秋の日差しが気持ちまでふわふわと軽くしてくれる。これが小春日和なのね。背中を温めてくれつつ、優しい気持ちまで運んでくれる日差し。こんなほっこりするような昼下がりは、なんとも気持ちがいいわ。

   と、ここまで華やいだ気持ちをイメージしながらパソコンに向かってみた。普段のすさんだ気持ちは隠し、女子度が上がりそうないい匂いがするキャンドルの香りをイメージしてみたのだが、どっちにしても稚拙だから変わりはないか。

「文章に華が出てくるんだ」

   と、こんな無謀なことをやってみたくなったのにはワケがありまして。

「銀座に行くと、文章に華が出てくるんですよ」

   ある国民的作家の大先生とお仕事をさせていただいた際、この言葉が出てきた。誰もが知る作品を数多く発表されている大先生。その打ち合わせの席、ガチガチにかたまりつつも聞いてみたかったのが、若い女性が好きな理由について。「女の柔肌に触れたい」と過去にインタビューで発言されていた大先生に、聞いてみたかった。若い女はどこがいいのか、そしてなぜ煌びやかに着飾った女性を求めて銀座へ通うのかと。

   大先生は今でも銀座へ通っている正真正銘の銀座通のお方としても知られている。そりゃぁ、ベストセラー作家の先生は金払いもいいんだろうなぁ。女の子たちだって競って群がるだろうね。それに銀座に通って40年近くになる方だと、いろいろ心得ていらっしゃるだろうから、なんともいいお客さんなんだろう……。

   私などは卑屈な見方をすぐにしてしまう。チヤホヤされてエネルギー湧くんでしょ! と考え方も実に幼稚である。そこまでして得たい何かが若い女や銀座にはあるんだろうか。

   その答えが「文章に華がでる」

   この模範解答はどうも歯がゆい。どうにも言い返せず、はぁ~そうですかとため息。

推理小説は頭だけで書ける

   そんな非日常的な毎日を過ごしていらっしゃる大先生。昔は作家といえば銀座、銀座といえば作家がいる街だったとおっしゃる。有名な作家にはそれこそ大切な女性がいて、あの女性は○○先生の彼女だとか、あるクラスになってくると彼女に店を持たせただの、はたまた店のトイレで女に刺された作家が悶えていたなんてこともあったらしい。愛憎劇が目の前で繰り拡げられるのが銀座だと、目をつぶりながら懐かしそうにお話しになる。

   そして今は銀座に作家がいなくなったと嘆いた。その結果、恋愛小説を書ける男性作家がいなくなったのが残念だと言う。たしかに、いま恋愛小説を書いているのは女性作家ばかりだ。そして大先生はニンマリしてこう言う。

   「銀座に来ない作家はダメだ。だから男の作家はいま推理小説しか書けないんだ。恋愛は体を使わないとできないんだ。推理小説は頭だけ使ってればいいけどね」

   そして我が身を振り返る。深夜にあさりがどうしたのだのと、やはり文章に華がない。そりゃそうさ、華のあるような生活してないからね。そして妄想だけではどうもリアリティーにかけてダメなようです。

モジョっこ

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