新興市場「現地化」で生き残れ―日本企業の新しい人材採用

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   デフレ不凶の出口が一向に見えてこない日本経済、加えて円高で、来春卒業が予定されている大学生の就職内定率(2010年10月1日現在)が57.6%と過去最低まで落ち込んだ。そんな『生殺し状態』の経済のなかで今、企業内の姿が大きく変わりつつあるという。

   背中を押しているのは、生き残りのために新興国市場の開拓に全精力を注がざる得ない現状。新興国に根差した手法を取り入れないと、これまでの日本企業のやり方では通用しない。そのために新興国から優秀な人材を確保する動きが顕著になっているのだ。

   「クローズアップ現代」は、グローバル企業の人材・組織論が専門の一橋大大学院の一條和生教授をゲストに、新興国市場へのシフトに挑戦するために社内の「公用語」まで変える日本企業の最前線を追った。

中国人社員、入社3年で執行役員

   中国・上海で今月3日、日本企業17社による中国人学生を対象にした就職面接会が開かれた。参加した大学生全員が、中国でもトップクラスの復旦大学や上海交通大学といった学生たちだ。採用が決まれば日本の本社勤務となり、日本人と同じ待遇が受けられる。

   企業はなぜ日本人でなく、中国人社員を必要としているのか。採用側の1社、大手おもちゃメーカー「タカラトミー」の担当者は次のように語る。

「日本のクオリティにこだわり、全部保ったうえで中国に進出したが、結果は割高になってしまい苦戦が続いている。社員も現地化して、現地で成功することが課題と思っている」

   その一方で、採用した外国人社員をどう受け入れ、処遇するかも大きな課題だ。日本的な年功序列や不透明な意思決定のやり方のままではすぐに嫌われる。中国市場でビジネスを始めたインターネット通販の「楽天」が、そうした日本の過去の常識を打ち破る一つのモデルケースになっている。本社採用500人のうち100人が外国人という同社は、社内の公用語を英語に統一。入社3年目の中国人男性社員を本社の執行役員に大抜擢した。

   また、その逆に本社の若手社員を新興国へ武者修行に出し、新興国の文化や考え方、価値観を学ばせようという企業も出てきた。アサヒビールは今年から、将来の経営の中核を担う若手社員を「武者修行研修」と称して、半年間の期限付きで7か国に派遣している。

そこにしかないニーズ

   さまざまな形で国際化に向けて急旋回する日本企業だが、キャスターの国谷弘子が企業の慌てぶりが多少心配なのか、「新興国ビジネスを展開するために一気に国際化している様相ですね」と聞く。一條教授が次のように解説した。

「いま特徴的なのは新興国のボリュームゾーンへの挑戦。これまで日本企業は、高機能、高品質を武器にプレミアム市場をフォーカスしてきたから、どうしても割高にならざるを得なかった。もっと大きなボリュームゾーンの存在に気付き、今までの戦略が間違いだと気付いた。
   ところが、ボリュームゾーンでは今までのやり方は通用しない。そのためには現地でしかわからないニーズ、その市場にあった安いモノづくりの方法が必要で、これは現地の人しかわからない」

   さらに、国谷は「そのためにはどのような仕組みの変革が求められているのか」と聞く。一條教授があげたのは3つ。一つは社員によくわからない意思決定のプロセスの透明性。二つ目は人間関係の悪化を懸念しがちな意見の対立を怖がらないこと。三つ目はそうしたことを含めて文化を変えていくことだという。

モンブラン

クローズアップ現代(2010年11月17日(水)放送「『新興国人材』日本企業は変わるか」)

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