江口洋介警部補「謎解き」の向こう…「底知れぬ孤独」に説得力

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「松本清張スペシャル 球形の荒野 前編」(フジテレビ)2010年11月26日21時~

   過去に何度も映像化された作品であるが、それらのドラマには時代を大幅に変更したために無理が生じて失敗したものもあった。今回も数年移動させてはいるが溶け込めた。但し、大人の髪型は当時、ドラマとは似て非なる短髪がほとんどで、前髪は垂らさず、きちんと7:3に分けていた。当時の写真を見ればわかりそうなものだが。
   東京オリンピックが後10日で開催されるという昭和39年の秋、東京の郊外で元在外公館付き陸軍武官が絞殺されて事件が始まる。警視庁警部補・鈴木次郎(江口洋介)と世田谷署刑事・添田彰一(生田斗真)が追ってゆくのだが、総ては奈良の名刹の芳名帳に残された筆跡から派生し、戦争中に病死したはずの元1等書記官が生きていて、帰国しているのではないかという謎が浮かび上がる。
   映像化された清張の作品の内で、筆者は「砂の器」と並んでこれは最も好きな小説の1つである。その理由は、繁栄する文明の中にありながらも、底知れぬ人間の孤独が存在するのを描いていて、清張自身の、極貧の生い立ちの悲しさを思い起こさせるからである。
   耳にタコが出来るほど内容を承知の人間からすれば、この前編のあちこちの場面で、野上顕一郎(田村正和)の姿を登場させるのは、種明かしのようでマイナスにも思えたが、後編(明日掲載)を見て違和感はなくなった。つまり、サスペンスの謎解きが主眼ではなくて人間の愛と孤独が主題であり、そこそこ説得力があったのである。

(黄蘭)

採点:1.5
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