承認進まぬ日本の医療機器―ついていけない審査官「能力・知識不足」

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   「タイムイズマネー」なんていう言葉もあるが、なんでもかんでも時間を節約すればよいというものではないだろう。慎重のなかにも慎重を期して、念には念を入れて、時間をかけてやったほうがよさそうなこともある。新開発の医療機器(デバイス)を承認するかどうかなんてことも、安全面で人の命に大きく関わるのだから、一概に審査が早ければいいとは言えない。

   番組によると、日本ではデバイスの承認に時間がかかる。デバイス30種を調べたところ、米国の2倍以上の平均3年を要したとの統計があるそうだ。なぜそれだけ時間がかかるのか。日本人の典型的な行動様式で、美徳ともされる「慎重」や「丁寧」、「万全」が理由ではないようだ。

米国機関にテスト依頼

   デバイス審査を担当するのは、独立行政法人の医薬品医療機器総合機構(PMDA)。医療機器を担当する審査官は59人いて、その数は10年間ほどで2倍に増えた。それでも一人が10件ほどの案件を掛け持ちしているそうで、まだまだ人手が足りないのだろうか。

   「それ以上に深刻だとされているのが、審査官の知識や能力の問題です」とナレーション。医療機器メーカーに対する番組のアンケート(133社中45社が回答)では、30社が「審査官の専門知識不足」を時間のかかる原因に挙げ、1位になった。ちなみに2位は「改良のたびに再申請」、3位が「審査官が足りない」であった。「医療機器の本質を理解してない質問が非常に多い」と、アンケートに答えたメーカー担当者は不満をもらす。

   諏訪市の会社(時計づくりの実績を持つ)は、補助人工心臓の自信作を8年前に完成した。安全性をテストするために当時の審査機関にアドバイスを求めたところ、「それはメーカーが考えること」と一蹴されたという。そこで海を渡って、米国の食品医薬局FDAに協力を頼むと、審査官がさまざまな観点から的確なアドバイスをくれた。FDAでは新デバイスの申請が出されてから、30日以内に必ず回答するという。

広がる「デバイスラグ」

   PMDAも審査官の専門性を高めることの必要性は認識している。担当者は一方で、「工学、医学、薬学、生物学という範囲を超えて、人の健康をきちんと理解し、評価する。これは一朝一夕にできることではありませんので、審査をしながら教育を行っています」と、時間のかかることに「ご理解」を求める。

   デバイスの審査同様、人材育成にもたっぷりと時間をかけてといったところなのだろうが、その間にも欧米などでは当たり前に使える日進月歩の先端デバイスが日本では使えないという「デバイスラグ」が刻一刻と広まっていく。

ボンド柳生

クローズアップ現代(2010年12月7日放送「解消できるか『デバイスラグ』~遅れる日本の医療機器~」

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