2024年 4月 16日 (火)

チャイナドリームにかける日本人起業家たち―苦労多いが成果大きい

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   中国で新たな道を開こうとする日本人が増えている。かつて日本人の長期滞在者数はニューヨークが1番だったが、いまは上海だ。4万8146人で、10年前の7倍以上。その大半が「チャイナ・ドリーム」を追っている。

   米系広告会社で働く出井香里さんは5年前まで日本企業の駐在員だったが、帰国命令が出たところで転職に踏み切った。200人中たった1人の日本人で、中国語、英語を駆使して3つの大手企業の広告戦略を担当している。

   収入は20%増えたが、成果の求めも厳しい。広々としたアパートに住み、「自分のやりたいことに近づいた。 夢を追いかけている途中です」と話す。

   こうした日本人の現地採用のための求人情報会社もある。

「中国語不問」「10社に応募すれば4、5社の内定も夢ではない」

   HPには日本からのアクセスが2万2000人もあって、「まだ増える」という。

   上海の日系企業はこの3年で5635社増えて、いま2万9876社ある。その日本人社会に向けたフリーペーパーもある。すべて日本語で週2万部を出す。社員38人中25人が日本人だ。

   元広告マン(28)はネットでここを見つけた。仕事は広告制作と記事のレイアウトだが、「こなす量が違う。日本では得られない経験で幸せだ」という。収入は日本での半分に減ったが、同僚3人との共同生活でしのぐ。彼らは「帰る気はない」「ビジネスを覚えたい」「起業したい」と口をそろえる。

日本飛び出す「和僑」

   その起業に踏み切った人たちは、中国の「華僑」になぞらえて、自らを「和僑」と呼ぶ。和僑会もあって、先頃アジア各国の和僑の大会も開いた。

   その1人、ファッションデザイナー金田茂さん(43)は、上海のアパレル企業で3年のキャリアを積んだあと、昨年、会社を起こした。4人の社員は全員が中国人だ。商品のターゲットは20、30代で、変化のはげしい中国のトレンドをつかむため地下鉄で観察を続け、いちはやくデザインに反映させる。

   大規模開発が進む北京で、7年前に起業した建築家の迫慶一郎さん(40)は、中国全土でプロジェクトを展開している。大地震のあった四川で小学校を寄贈したことで知られる。

   急な設計変更や短時日での要求など中国式に苦労しているが、「質を落とさず、日本の3倍のスピードでないと勝ち抜けない」という。江蘇省の地方都市のシンボルとなるビルのプレゼンの場面が流れたが、これも持ち込まれたのは3週間前だった。迫さんはビルのなかに10メートルの木が立ち並ぶプランを市の幹部の前で説明。総工費20億円の工事を受注した。

   迫さんは「中国では、ひとつの都市をデザインするのも夢ではない。中国の都市を作りたい」と語る。たしかに日本では考えられない夢だ。

「仕事は一生 政治は一瞬」

   日本で経営コンサルタントをしている宋文洲さんは、彼らとは逆に日本に留学して日本で起業した人だ。中国での日本人を、「企業の駐在ではなく、自分で行った人は根性がある。彼らが日本を見捨てたとは思わない。1人ひとりが良くなっていくことが、結果として日本の国力になる。戻ったらビッグな経営者になれる」という。

   「中国というと政治的なリスクがあるが」とキャスターの国谷裕子が質問する。しかし、宋さんは楽観的だ。

「尖閣問題はきつかったし、今後もないことはないだろうが、仕事は一生の問題。政治は一瞬だ。日本にとって中国が一番の相手という状況は少しも変わらない」

   たしかに、これだけ関係が深くなると、双方ともうかつに政治のゲームには入れないかもしれない。それにしても、「政治は一瞬」とは言いも言ったり。さすが中国人、視線が長い。

*NHKクローズアップ現代(2011年1月17日放送「『チャイナドリーム』追いかけて」)

文   ヤンヤン
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