建築界ノーベル賞の日本人コンビ―世界から引っ張りだこの魅力と実力

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   いま公共建築物に求められるのは「外にいる人を呼び込み、多くの時間を過ごせる公園のような空間」なのだという。そんな設計で世界的に評価されている日本人建築家がいる。建築事務所「SANAA」を主宰する妹島和世と西沢立衛だ。2人の作品は美術館などの公共建物が中心で、昨年、建築界のノーベル賞といわれるプリッカー賞を受賞、フランスの地方都市に来年完成予定のルーブル美術館別館の設計を勝ち取り、世界中から注文が相次いでいる。

自由に人が歩き回る外に開かれた美術館

   2人がコンビを組んだのは、大学で住居学科を専攻した妹島が立ち上げた事務所に、西沢がアルバイトに通ったことからだった。「SANAA」を立ち上げたのは1995年。日本を拠点に欧米やアジアで活動している。

   世界で注目されるキッカケとなったのは、04年に開館した石川県金沢市の「金沢21世紀美術館」。現代アートが身近に感じられる美術館として年間150万人が訪れる。「自由な人の動き」が設計のポイントで、デザインを見た関係者は初め驚いた。展示室は切り離され、まるで迷路のような空間でつながっている。美術館の決まりだった観覧の順序はなく、観覧者は展示室をつなぐ通路を思うままに動ける。通路を巡ると次々現れる新しい景色、外壁はガラス張りのため外が透けて見え、街の路地を散策しているような錯覚が楽しい。外を行く人から見ると、中へ呼び込まれるような趣になる。そんな「公園のよう建物」が世界の注目を集めた。

   キャスターの国谷弘子が「どういった部分を世界が評価し、魅せられているとご自身は考えですか」と聞く。西沢が答えた。

   「アメリカ人を金沢の美術館に案内するとみんな驚く。『こんなに開けっ広げなんだ。これは幼稚園なのか』って。 彼らが思ってきた権威づけられた美術館とは全く違う風景。それでいて街の人とけっこう楽しそうにやっている。そういう風な形で美術にアプローチしていくイメージがなかっただろう」

   「公園を意識しながら設計することで、どういう良さが建物に醸し出されると思いながら作られるのですか」という国谷の質問に、今度は妹島が答えた。

「高いところから風景を見たときの気持ちよさ、谷底で囲まれながら落ち着きたいなど、いろんな場面、いろんな目的の人が一緒にいられる場所、自分のプライベートな空間を作れる場所の一方で、ドッカリ世の中と繋がっていると感じる場所は公園ではないか。
公共の建物を作る時は、そういう場所、新しい公共空間としてあったらいい」

「入ると虫が中にいたりするんですよ」

   「SANAA」の「公園のような建物」は、昨年、スイスのローザンヌに完成したスイス連邦工科大学ローザンヌ校の「ロレックス・ラーニングセンタ―」でさらに進化を遂げた。上ると大きな丘を連想させる間仕切りのない広い空間。気に入った場所を見つけて勉強したり友達と語り合ったりしている学生たち。地元市民にも開放され、地域に新たな交流の場所を提供することに成功した。

   日本では地域の村おこし、街おこしにも挑んでいる。かつて産業廃棄物の不法投棄で問題になった香川県豊島に、西沢が設計した自然の豊かさを体感できる美術館が誕生した。入館した女性は「入ると虫が中にいたりするんですよ。びっくりするけど、ああ、外と繋がっているんだと感じた」という。

   日本の都会はかつての住宅公団が作った兎小屋を積み上げ並べたような「団地サイズ」がそのまま継承された平べったいマンション群、隣と壁がくっついた戸建て住宅がひしめいている。そこには馴れだけで本当の癒しはない。公園のような建物がなぜいま評価され、求められるのか。やはり「個」の居住空間では求めても得られない癒しや外との柔らかな繋がりがそこにはあるからなのだろうか……。

NHKクローズアップ現代(2011年1月26日放送「建築がつなぐ~妹島和世・西沢立衛の挑戦~」)
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