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「低リスク婚」でハネられる年収400万円以下「男」

   結婚したいけど相手が見つからない――そんな人が増えている。いま未婚率は、25~29歳で男71%、女60%、30~34歳でも男の半分近く、女32%。将来はさらに高くなる。出生率はすでに1・37だ。

   都内のお見合いパーティーに出席した40歳の会社員をカメラが追った。会費5000円、出席は50人。彼は積極的に動いたが交際相手は見つからなかった。なかには、100人以上と見合いして全敗という人もいるという。

   カベは年収だ。アパレル関係の彼は年収380万円。だが、女性の70%が「年収400万円以上」を求めている。パーティーにいた女性は言う。

「つき合ってる男性はいるが、年収で二の足を踏んでいる。子どもを育てられないでしょ。どう生活するか不安ですよ」

   現在、独身男性で年収400万円未満が74.9%である。うち200万円未満が38・6%という驚くべき数字だ。非正規社員の増加が背景にある。これではとても結婚は無理。共働きでもやれるかどうか。

かつては7割が社内婚

   リーマンショック後、女性が最低ラインを決める傾向が強くなったと結婚相談所はいう。大部分が公務員か大企業の正社員を希望する。それも、いま高くても将来減る人はダメ。「低リスク婚」というのだそうだ。

   経済が右肩上がりで終身雇用が当たり前であった時代、結婚の69%は社内婚であり、人のつながりによるお見合いだった。それがいま36%になった。これは女性にとっても深刻な事態だ。「安定のために結婚したい」から「低リスク婚」になる。

   山田昌弘・ 中大教授はこう話す。

「20年、30年前は考えなくてよかったんです。男性の大部分は正社員だったし、将来の給料アップが約束されていましたから。しかしいま、非正規社員が増えて、人付き合いが変わり、職場環境の変化が、結婚の変化につながっています」

   非正規雇用は1995年に男8・9%、女39・1%だったものが、2010年にはそれぞれ18・9%、53・8%になった。未婚男性だと3割近いという。それでも彼らがやっていけるのは、多くが親と同居しているからだと山田教授はいう。ではどうしたら打開できるのか。

自治体と企業が結婚アドバイス

   「クローズアップ現代」は愛媛の取り組みを紹介した。自治体と700の企業連合が結婚支援センターを立ち上げ、お見合いパーティーを開いている。ただの場づくりではなく、ボランティアの相談員200人がアドバイスして、交際を始めたカップルの相談にも乗る。

   相談で多いのはやはり収入のこと。そこでセミナーを開いて、「養ってもらう」から「ともに働く」という意識変革を促している。企業の方も共働きしやすいよう、ネットワークで情報を共有して家庭と職場の環境を整える。この結果、2年間に2000組が交際を始め、83組が結婚した。昨年9月に結婚したカップルは、2人合わせて年収380万円。契約社員の妻を助けて、夫が家事を手伝い、貯蓄をし、「2人で乗り越えていきたい」と話していた。

   キャスターの国谷裕子「こういうカップルが増えれば、少子化対策にもなりますね」

   山田教授「夫が妻を養うという固定観念を変えることと、雇用環境を変えることが結婚支援になり、さらに少子化対策になる。地方の危機感はすごいですよ」

   うーん、これは愛媛だからできることではないのか。冒頭に出てきた東京の40歳男性の孤独な姿が浮かぶ。その先に非正規雇用の無数の男女がいる。まさに東京砂漠だ。永田町は経済が少子化につながるとどれだけ理解しているだろう。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2011年2月21日放送「結婚したいのに…~止まらない未婚化」)