2024年 4月 20日 (土)

途方に暮れる被災自治体―応援頼みたくても「周辺すべて壊滅」

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   菅原茂・気仙沼市長が言う。

「将来、再び産業の町にできるだろうか。だが、明日、明後日に忙殺されている」

   どの自治体も被害や現状の全体象が把握ができない。道路、通信の途絶、食料、物資の不足、どこにどう支援を求めたらいいのか……。

   死者・不明1500人を出した岩手・大槌町は、庁舎が津波にのまれて町長が亡くなり、職員136人中30人が安否不明となった。避難所40か所5000人に、担当者は20人だ。安否の確認もままならない。

   県内の市町村には緊急時に近隣が応援し合う態勢があった。だが、今回は全部が被災地だ。次の頼りは県だが、県も「県域で対応できる規模ではない」。東日本大震災での人的被害は283市町村に及ぶ。

   被災地を調査した室﨑益輝・関西学院大教授は、「災害の規模があまりにも大きくすさまじい。対して自治体は小さく、人手がない。しわ寄せが全部被災者にいっていて、病気になる人も亡くなる方もいる」

阪神淡路経験の兵庫県職員がサポート

   注目されたのが「関西広域連合」だ。昨年12月に結成された。何県と何県がどこを担当すると、自治体間の支援の分担が決まっている。宮城県の対策本部に兵庫県職員の姿があった。何が必要かを兵庫県に伝える。衛星電話がほしいというと、兵庫のトラックが8箱31台を届けてきた。

   職員も派遣する。兵庫県内各地から集めた医療のエキスパートのチームが石巻に入った。ほとんどが阪神・淡路大震災の経験者だ。兵庫・佐用町の職員は、一昨年の台風被害で避難所を運営した経験があった。350人の避難所を受け持つことになった。それまでの13日間、2人で24時間対応してきた地元職員は役場へ戻る。佐用町の職員は避難者への「声かけ」から始めた。「死んだ人のことを考えれば」と、被災者が声をあげなくなることを知っていたからだ。小さな声を手がかりに避難所の運営を変えていく。

   「いいですね。これを持続的、系統的にやると、支援の空白が埋まる。被災地にしかできないこともあるが、応援組が埋める仕事もある」(室崎教授)

   いま被災地の自治体が直面しているのは、被災者が散り散りに去って町がバラバラになりはしないかという危機感だ。教授は「自治体のリー ダーシップ、復興のビジョンが必要だ。いつまで我慢して、仮設の見通し、そしてどういう町にしていくかを示すことだ」と提案する。

すき間埋める救援ボランティア

   広域災害はボランティアの足も止めた。神戸のNGOの吉椿雅道さんは阪神大震災、四川大地震を経験している。3日目に南三陸町に入ったが、拠点がつくれなかった。

「行けども行けども被災地で、ここまで広範囲だとは」

   内陸に入ったが、今度はガソリンがない。結局、NGOは派遣を見送った。吉椿さんは山形・米沢の学生と石巻に入る。小学校の体育館の泥のかき出しをしたあと、「足湯」をやった。避難所のストレスから亡くなる人があったからだ。「生き返った」と避難所が笑顔になった。「人がついていれば、死なない」と吉椿さんはいう。

   その後、東京で全国の50以上のボランティア団体が集まり、拠点情報交換の仕組みを作った。その結果、石巻に拠点があるという情報が入って、NGOは21人を送り込んだ。津波から17日目である。

   室崎教授「小さなすき間はいっぱいあるが、これはボランティアにしか埋められない。疲れている人を後からの人が埋めるというのもそれ。いまこそ全国から行ってほしい」という。

   あまりにも広域、地域崩壊の危機、さらには原発のリスクーーだれにとっても未体験の事態だが、ようやく動き出したように見える。必ずや結果を見せてやろう。世界中が見ているのだ。

   *NHKクローズアップ現代(2011年3月28日放送「被災自治体を救え 『超広域災害』の衝撃」)

文   ヤンヤン
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