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原発汚染!心配ない「ポスト」「新潮」、用心しろ「文春」「朝日」―それぞれの説得力

   講談社の野間佐和子社長が逝去。享年67歳。今年に入ってから体調の問題が取り沙汰されてはいたが、残念なことである。専業主婦だったが、夫の突然の死によって社長になり、一時は講談社を2000億円企業にまで伸ばした。だが、だいぶ前から足が弱り、演壇を下りる際の痛々しい姿が目につくようになっていた。最近はパーティで見かけても車椅子姿だった。

   十数年続く出版不況に、さぞ心を痛めていたことであろう。3月31日(2011年)付で長男の野間省伸副社長が社長に就任した。まだ42歳、元銀行マンの青年社長がこの出版界の難局にどう挑んでいくのか、期待して見ていきたい。

チェルノブイリで死亡は15人

   戦後最大の国難をどう切り抜けるのか。週刊誌の売れ行きがいいそうである。耳たこになった枝野官房長官の「ただちに放射能による健康被害はない」という言葉が、かえって疑心暗鬼を呼び、被災地だけではなく東京までもがパニック状態になってきている。新聞やテレビの大本営発表では真実がわからない。そうした不安感が週刊誌を買う大きな動機になっているのだろう。

   昨夜、硬い本を出している出版社の社長から聞いたが、数年前に出して売れ残っていた原発関係の本が売れはじめ、早くも3刷までいっているという。他の出版社の原発関係の本も同様であろう。

   福島原発から漏れ出している放射性物質の危険性を知りたいという読者の要求に応えて、今週各誌に「原発汚染食品 本当に知りたいQ&A」(週刊朝日)という企画が目につく。

   だが読んでみると、いまの数値なら心配ない派と、いやいや用心したほうがいい派とに分かれている。前者は「週刊ポスト」と「週刊新潮」で、ポストは「『放射能と人体』本当の話」で、冒頭から「結論から先にいうと、今のところ、今回の原発事故により、一般市民に重大な健康被害が生じる可能性は、種々の研究成果、疫学調査から判断するならば、低いということになる」として、「甲状腺がんを誘発するというヨウ素131は、40歳以上は心配しなくていい」「セシウム137は数ヶ月もすれば体外に排出される」「チェルノブイリ原発事故では、放射性物質や核燃料で死亡した住民はいなかった。汚染された食料を子供たちが食べてしまったために、甲状腺がんの発生率が激増したが、この病気は治癒できるため06年時点で死亡したのは15人だった」「被爆者から生まれた子供の死亡率、染色体異常の発生率、身長・体重などの異常は『全く認められない』という結論が出ている」「今回の事故処理に従事した東電社員より宇宙飛行士のほうが多く被爆している」と列挙している。

   新潮も長崎大学長瀧重信名誉教授と東京工業大学原子炉工学研究所松本義久准教授に、「何ら心配ない」「健康に影響ない」とコメントさせている。

官邸HPのCTスキャン放射線量にも嘘

   後者の懐疑派は「週刊文春」と「週刊朝日」になる。文春は「放射性物質『汚染食品』風評か、本当に危ないのか」で、青沼陽一郎氏に産地をルポさせている。その中で、福島の原乳について、福島県の放射線健康リスク管理アドバイザーに就任した山下俊一長崎大学教授は、放射性ヨウ素を取り込んだ牛の甲状腺はだいぶ被曝していて、そのヨウ素が最初に凝縮されるのが原乳だと警鐘を鳴らしている。

   また、現在使われている放射性物質汚染の「暫定基準」は、原子力安全委員会が示した「指標値」を借りたもので、あわてた厚労省が食品安全委員会に安全基準の数値を諮問したが、もともとその委員会にしてからが内閣府の中に置かれ、職員も他省庁からの出向が多く、議論を行う専門調査会のメンバーにも大学教授が多く、国から研究費をもらう立場であれば、中立公正な立場を保ちずらいのではないかと疑義を呈する。

   これは別ページだが、近藤誠慶応大学医学部講師が、首相官邸のHPで日常生活で放射線を受けることがあるが、健康上の問題となりませんとして、CTスキャンの放射線量を示し、その数値を6・9ミリシーベルトとしていて、新聞やテレビもその数値をそのまま引用しているが、これは「都合のいい数字」だと批判している。

   06年の調査によると、1回のCT撮影で受ける線量は、腹部・骨盤では男性が23ミリシーベルト、女性が29ミリシーベルトで、造影剤を入れてもう1度撮れば数値は2倍になり、定期的に受けていれば100ミリシーベルトなど簡単に超してしまう。「タバコを除けば、国民の発がんの最大原因は医療被曝だと言っても、あながち過剰ではありません」と恐ろしいことをいっている。

基準値以下でもゼロではない

   朝日は原発反対派の論客・広瀬隆氏が連載で、「福島第1原発から放出された大量の死の灰は、大地に降り積もり、雨で川に流れ込んで、農業用水や海を汚染していきます」と「食物連鎖」の恐ろしさを訴えている。

   また、「原発汚染食品 本当に知りたいQ&A」では、岡山大学院の津田俊秀教授に「放射線による発がんへの影響は『この被曝量より少なければゼロ』ではなく、どんなに少なくとも人体への影響があるとして考えられています」といわせている。野菜や肉、魚に関しても、「これからも、食品を摂取して起こる内部被曝には、注意が必要です」(山口英昌美作大学大学院教授)とし、ただちに影響がなくても注意が必要だとする。

   水道水については、「今の数値であれば、まったく心配するレベルにはない」(山下俊一長崎大学大学院教授)が、水道水から放射性物質を取り除くことは、煮沸しても浄水器でもダメだそうだ。

   母乳に関しては、「放射性物質が母乳中に濃く出ることはない。半減期があるので、減っていきます。また、摂取基準内であれば慢性的に摂取しても、健康被害が出たという報告はありません」(神奈川県立こども医療センター新生児科大山牧子医師)というから、安心のようだ。しかしこれも、これ以上原発被害が拡大しないということが前提である。

   テレビ、新聞の原発報道で一喜一憂している人は多いが、少し安心したいならポスト、新潮、万が一を考えて関西や国外避難を考えている人は文春、朝日を読むのがいいのかもしれない。