長期化で深刻になってきた高齢者の「避難所症候群」

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   避難所生活が長引き、健康を害する高齢者が増えている。睡眠不足やストレスが溜まり、体に大きな負担となって病気になってしまうのだ。市町村の役所機能が喪失してしまったこともあって、「食事や生活が整わない限りリスクの高い状況続く」(被災地で治療に当たる医師)という。

半分の人に血栓

   国立感染症研究所が被災者の健康状態を調査したところ、震災から1週間後ぐらいからインフルエンザ、破傷風、肺炎、胃腸炎などの感染症が増え、時間の経過とともに脳卒中や心筋梗塞、エコノミークラス症候群など命にかかわる病気が目立ち始めたという。

   現在、宮城県石巻赤十字病院が中心となって血管の検査を行っているが、高齢者にかなりの確率で血栓ができていることが分かってきた。

   「検査した高齢者のうち、50%近い確率で血栓が見つかっている」(石巻赤十字病院医師)

   避難先の不自由な生活で体を動かすことが少ないだけでなく、津波に襲われた時に流木などに足腰をぶつけたり転んだりして、その打撲したり出血したところの血管内側で血液を固める成分が活性化し、血栓ができやすくなっているという。血液のかたまり、血栓が足の血管にでき、さらに大きくなった血栓の一部が肺に移動して血管をふさぐ。エコノミークラス症候群だ。

   さらに、脳梗塞や心筋梗塞の原因となる高血圧も広がっている。岩手県大船渡市を回っている自治医科大の医療チームによると、多くの被災者の血圧が異常に高いという。最高血圧190~200を超える人がいて、160以上の人が79%にも達している。原因はストレス。肉親を失い、住まいや生活の糧を失った被災者は強いストレスに晒されている。避難所の不自由な生活もストレスの原因になる。

水道不通で肺炎増加

   キャスターの国谷裕子は「肺炎も増えているといわれています。被災者の体にどんなことが起きているのか」と自治医科大の苅尾七臣教授に聞いた。

   「水分補給の問題がある。一つはトイレ。水洗トイレが使えないために簡易トイレを使わざるを得ない。階段を上ったり下りたりをいやがり、水分補給を控えてしまう。結果、塩分の排泄ができなくなり高血圧になります。

   また、上水道が整備されないと歯の衛生が行き届かず、細菌が気管へ入って肺炎にかかりやすくなる。被災地の粉塵を吸ったりしての肺炎も増加しています。上下水道の整備が急務と思う」

   被災地の上下水道の被害状況は、石巻市水道課によると調査の半分も終えていない状態で、復旧の見通しは立っていないという。被災地のライフライン、とりわけ上下水道に詳しい京都大准教授の平山修久はこんな指摘をする。

「被害の把握に手間取っているのが現状。取りあえず給水タンク車で飲料水の提供を行っているが、応急的な水循環システムを早急に考える必要がある」

   菅首相は「バイオマス活用のエコタウン構想」とかいう復興再建構想を明らかにしたが、民主党のマニフェストと似たような5年先、10年先の理想話はいらない。亡くなられた職員も多く、人手不足の地元自治体にお任せではなく、いま国がやるべきことは仮設住宅やこうした上水道の応急措置をどう進めるかだろう。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2011年4月13日放送「被災者の健康をどう守るか」)
文   モンブラン
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