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「週刊現代」原発恐いで部数急増!政府・東電の隠蔽で不安拡大

   「週刊現代」の勢いが止まらない。昨年下半期のABC調査では、現代が約3万3000部伸ばし40万部に乗せ、「週刊新潮」は約7000部落として約39万部。1位の週刊文春も約3000部落として約48万部。東日本大震災以降、現代はさらに伸ばしているから、今年中に首位逆転があるかもしれない。新潮の元気のなさがこのところ目立つ。木曜日発売組を現代、「週刊ポスト」(約3万6000部伸ばして約31万部)が追い詰める展開になっている。

焦る「週刊文春」トンデモ報道と対抗意識むき出し

   危機感からか、文春は珍しく「60歳からの『愛とSEX』」を特集し、「文春だから真面目に考えた」と、現代への対抗意識をむき出しにしている。だが内容は特筆するものなし。文春さん、自分の不得意分野には手を出さないほうがいいのでは。

   原発特集のなかでも現代を俎上にあげて批判している。「放射能恐怖報道どこまでエスカレートするのか」で、現代の誌面を出して、「恐怖報道をひた走る『週刊現代』(4月2日号)」とキャプションをつけ、中でもこう書いている。

「とりわけ恐怖報道が目立つ週刊誌をよく読むと、あるパターンに気づかされる。胎児の奇形リスクが高まるとか、スリーマイル島の事故では双頭の牛が生まれたという『報告』があるとか、現状の分析より、将来的な可能性を並べ続けるのだ。(中略)煽る一方で、『風評被害から産地を守れ』とも書く。これでは日本を応援しようと言いながら、『日本の工業製品は放射能を浴びている』と騒ぐ海外のトンデモ報道を変わらない」

   しかし、発表されている放射線量や原発の現状が正確なものではないと、多くの国民が感じ、不安でしょうがないから現代を読んでいるのだ。隠蔽されていない正確な数値や原発の復旧過程が公にされれば、現代を読む必要がなくなるかもしれない。そうしたときが来るのが望ましいが、現実はまだまだそうなってはいないのだ。

   新潮の連載、福田和也氏の「世間の値打ち」に興味深いことが書いてある。『軍事研究』という雑誌のなかに、こういう下りがあるというのだ。

「巻頭言で、元北部方面総監、陸将の志方俊之氏が、〈自衛隊の特殊武器防護部隊が現地に集合しているのだから、それらが持つ線量計を計画的に配置・運用し、継続的かつ定期的に計測した線量の実数値(等高線図)を発表すべきだった。自衛隊の統合任務部隊司令部は、その情報を持っていたに違いない。それを公表させなかったのは何故か。尖閣列島沖で起きた中国漁船衝突ビデオを非公開としたことに似ている〉

   福田氏も「これ、かなり本質的な問題提起じゃない」といっているが、この何故をもっと本誌で取材してほしいものだ。5月2日には細野豪志補佐官が、原発事故が起きた当初、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)のデータを公開しなかったのは「パニックを心配して」やらなかったと認めている。週刊誌は仲間揉めせずに、政府や東電が隠蔽している真実を掘り起こすことに全力を挙げてもらいたい。

乳幼児の放射線感度は大人の3~10倍。高いがん発生率

   その現代、今週も原発恐い特集が盛りだくさんだ。小佐古敏荘内閣参与が辞任したことを取り上げた「いい加減な、あまりにもいい加減なこの国の安全基準」では、校庭での放射線被曝量年間上限20ミリシーベルトというのは、「私の試算では、内部被曝の影響は外部被曝の5倍に達する恐れがある。もし外部被曝が20ミリシーベルトなら、内部被曝は100ミリシーベルトに達するかもしれない」(矢ヶ崎克馬・琉球大学名誉教授)と警鐘をガンガン鳴らす。

   4月30日、厚労省が実施した母乳の放射線物質濃度調査で、福島、茨城、千葉の7人の母乳から放射性ヨウ素131が検出されたが、「『放射線と妊婦・乳児・幼児』その危険性について」では、元内閣府原子力安全委員会専門委員の武田邦彦中部大学教授が、乳幼児は大人に比べて放射線の感度が3~10倍も高く、ガンの発生率も高くなることがわかっているとした上で、「たとえば福島県の空間放射線量が高い地域にお住まいの方ならば、空間からの放射線量だけで規制値いっぱいなのに、そこにたくさんの被曝が加わる。しかも大人より感度が高いわけですから、すべてが悪い方向にしかいかない。言いにくいことですが、それが現実なのです」と話している。

   どん尻に控えしは、「福島の海を『第2の水俣』にするのか」。班目春樹原子力安全委員長らは、「放射性物質は海で希釈、拡散される。人が魚を食べてもまず心配はない」といい続けているが、これは水俣病の時と同じいい分だと真っ向唐竹割り。

「希釈、拡散されるといって汚染物質をどんどん流し続ける、現在の福島の状況は水俣とソックリです。構図もよく似ていて、問題を起こした大企業のバックに国がいる。大企業も国も、問題を隠そうとする。水俣の時もすぐに海洋の汚染調査をしておけば、これほど患者が増えることはなかったでしょう」(患者側弁護団長を務めた千場茂勝弁護士)

   重いテーマがこれでもかと詰まった現代は今週も独走態勢である。

   こちらも好調なフライデーが、久しぶりに写真誌らしいスクープで話題になっている。

「1994年の連続リンチ殺人事件で死刑が確定した元少年、大倉(旧姓・小森)淳死刑囚(35)について、判決確定前の3月11日に名古屋拘置所内で撮影したとする写真を掲載した」(5月12日asahi.comより)

   大倉死刑囚は仲間と、大阪、愛知、岐阜で4人の若者を殺して殺人罪に問われていたが、最高裁が3月10日に上告を棄却した。

   ジャーナリストの青木理氏がインタビューのために面会したとき、隠し撮りしたようだ。 眉を顰める向きもあるかもしれないが、写真誌の役割はこうしたところにある。

あんまりだ!補償金仮払いで生活保護打ち切り

   最後に、私の友人(30代の女性)の話をさせてもらいたい。彼女の両親は福島に住んでいて、今回原発の避難地域に入ったため、東京の娘の家に越してきた。だいぶ前、父親はがんに罹り片足を切断、車椅子で生活している。働けないため以前から生活保護をもらっているから、今回も区に申請して受け付けられた。治療費がかなりかかるのだが、生活保護のため、少しの負担で済んでいるという。

   そこへ先日、東京電力が仮払い補償金として1世帯100万円を払うことを決めた。すると福祉事務所から、100万円が入ったら生活保護は打ち切るので、入ったら知らせてほしいといってきたのだ。父親は医療費がかかるから、100万円もらうより生活保護をもらっていたほうがいいとこぼしているという。もちろん、100万円を使い切れば、生活保護を再申請できるとはいうのだが、これっておかしくないか。

   役人からいわせれば、補償金も収入と見なすから、それがある間は支給しないというのは当然なのだろうが、これは親の遺産が入り、宝くじが当たったというのとは違うカネだと思うのだ。

   重い病を抱え、身動きもままならない老人が、ようやく身内のところに避難したのだ。そうした精神的なストレスや心細さに対する見舞金を、杓子定規に「生活保護は打ち切ります」はないだろう。たしかにこれはひとつの区や都の問題ではない。こうした問題は福島県内でも起きているはずである。

   国はこの100万円は例外にして、課税はいうまでもなく、生活保護を打ち切ることはまかりならんと宣言すべきだと思うのだが、読者諸氏はいかがお考えだろうか。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか